「頭痛の治療法」難経二十一難の臨床&エトセトラより。
2014年12月30日
難経二十一難の臨床&エトセトラより。
〔井上恵理先生の難経二十一難解説から山口一誠の考察文〕
難経二十一難を臨床で考えると、
肩こりや腰痛の「形が病ん」で鍼灸院に来た場合に、
脉証には病的変化が無い時には脉を整える治療はいらない。
形の治療だけすればいい。
肩が張っているなら肩だけに鍼を打つ、
腰が痛いなら腰だけに鍼を打つ。
『内傷無ければ外邪入らず 』の経絡理論が必要ない病状です。
黄帝内経・霊枢「経筋編」の治療法「痛を以って癒となす」・・
痛む所が治療をする所だと。
但し、
どの様に刺すかと言う方法は、経絡治療の法則になります。
「虚すればこれを補い、実すればこれを瀉す」治療法になります。
難経二十一難の臨床応用
「頭痛の治療法」も掲載しています。
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二十一難のポイント其の一は、
形病、脉病、生死について書かれています。
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第二十一難本文はこちらのリンクからご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/21nan/
・
「ゆっくり堂の難経ポイント一覧表」を作りました。
まだ、一難から 二十一難までしかアップ出来たいませんが、ご覧ください。
追記、 六十九難と七十五難もリンクできます。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/
・
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2014.12.30. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第二十難
2014年12月29日
ゆっくり堂の『難経ポイント』第二十難
経絡鍼灸の臨床から考えると、
一つの脉位に於ける状態だけを考えるのではなくて、
その脉位の陰陽を診る。
その脉位の相剋を診る。
その脉位の相生を診る。
このことの重要性を難経二十難で諭している。
その脉位と関係のある総べての経脉・総べての部位に、
思いを馳せて治療の完全を期さなければいけないと言う事です。
※ 難経二十難の臨床&エトセトラより。
〔井上恵理先生の難経二十難解説から〕
私の臨床例から考えると、
例えば、
寸口の脉が浮脉であってしかも外邪性のものであると言う場合、
瀉法すべき時であっても、
陰の脉がそこに含まれている場合には、
陰の方を初めに補ってから、陽を瀉すと言う方法を取らなくてはならない。
また、陰虚証、腎虚なら腎虚証と言う脉を打っているのだから、
腎だけを補えばいいと言うのではなくて、
腎虚なと言う証がある場合には、
必ずその相克する心の脉に実証があると言う事です。
そして、心の脉が実すると言う事は、
その陽である小腸が虚しているんだと言う様に、
一つの脉位に於ける状態だけを考えるのではなくて、
それと関係のある総べての経脉・総べての部位に、
思いを馳せて治療の完全を期さなければいけないと言う事です。
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第二十難本文はこちらのリンクからご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/20nan/
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「ゆっくり堂の難経ポイント一覧表」を作りました。
まだ、一難から 二十難までしかアップ出来たいませんが、ご覧ください。
追記、 六十九難と七十五難もリンクできます。
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2014.12.29. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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孫のsumireちゃんが笑顔でお祝いしてくれるそうです。
2014年12月25日
12月25日、今日は、山ちゃんの誕生日だ。
孫のsumireちゃんが笑顔でお祝いしてくれるそうです。
孫のsumireちゃんの脉も時々診ています。
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十九難
※ 十九難のポイント其の一は、
男女の脉にはそれぞれ、平常の固有の脉がある。
※ 十九難のポイント其の二は、
男子の脉は尺脉よりも寸口の方が強い。また、女子の脉は尺脉が強い。
男女それぞれ、この脈状が正常脈である。
※ 難経十九難の臨床&エトセトラ
井上恵理先生の臨床経験では、
女性では腎虚の病が非常に長くかかって治りにくい。
男性は肺虚証が非常に治りにくい。
そうです、、、
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第十九難本文はこちらのリンクからご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/19nan/
「ゆっくり堂の難経ポイント一覧表」を作りました。
まだ、一難から 十九難までしかアップ出来たいませんが、ご覧ください。
追記、 六十九難と七十五難もリンクできます。
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2014.12.25. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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来年の抱負、難経の考察文をHP上で完成させること、
2014年12月24日
来年の抱負、
難経八十一難の考察文をHP上で完成させること、
そうすれば、もう少し、臨床の腕も上がるのではと思ってます。
難経八十一難のおおまかな分類(6つの分類)の次に、
「ゆっくり堂の難経ポイント一覧表」を作りました。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/
まだ、一難から 十八難までしかアップ出来たいませんが、ご覧ください。
追記、
六十九難と
七十五難は肝旺実証の診断と鍼治療法もリンクできます。
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2014.12.24. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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右手寸口に6ミリ経のゼンマイ様の脉状がある。
2014年12月20日
最近、来院された方で、その脉状が右手寸口に6ミリ経のゼンマイ様の脉状がある。
ご本人曰く「私は色々あるから、難しわよ、ゆっくりやってね。」とのこと・・・
大きな治療の宿題を頂いたところで、難経十八難がまた役立ちそうです。
やはり難経は臨床家が治療の実際から作り後世に残してくれた現代の鍼灸師へのプレゼントですね。
難経十八でもまた、脉証腹証一貫性の法則が展開されています。
右手寸口の手の太陰肺経を脉診して、結滞脉があれば、
腹診でも、臍の右脇に「積氣」の塊があると。
また、
肺脈に結滞脉がなくても、
右手寸口の脉が沈んで伏した脉状であれば、
積の塊がある事があると。
この様になっていない時は、慎重に施術を進めなさいねと。
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第十八難の本文はこちらをご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/18nan/
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2014.12.20. みゃちゃんブログ掲載
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脉診によって、死生存亡の3つのパタンーンが全て判ると、
2014年12月14日
脉診によって、死生存亡の3つのパタンーンが全て判ると、
難経第十七難には、述べられています。
つまり、証と脉が一致する者は生きるが、一致しない者は死ぬと言う事が書いてあります。
ゆっくり堂鍼灸院でも、
臨床を重ねて行くと、素直に症状が改善する人と、そうでない人に出会います。
そんなことが難経十七難からまた学ばされます。
そしてまた、当たり前すぎることですが、経絡鍼灸治療を行う術者にとって、
『内傷無ければ外邪入らず 』の経絡理論の原則を踏まえて臨床にのぞまなければと思い知らされる日々です。
詳しくは
ゆっくり堂の『難経ポイント』第十七難をご覧ください。
解説全文 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/17nan/
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2014.12.14. みゃちゃんブログ掲載
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お腹の診断と病状と脈状が一致した時に治療方針が決まります
2014年12月11日
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十六難
※ 十六難のポイント、
脉証腹証一貫性の法則が難経十六で展開されています。。
鍼灸家の診断と治療方針についての点検の法則が難経十六に明記されている訳です。
肝心脾肺腎のそれぞれの脉状と病状と腹証から弁証診断が一致した時に正しい証が導かれると言う事ですね。
脉診と脉証腹証一貫性の法則の参考リンク
http://yukkurido.jp/keiro/sisn/kiru/myk/
・
腹診の診所(診察場所) 図ー1
参考リンク
http://yukkurido.jp/keiro/sisn/bou/hara/
肝証を例に〔脉状〕〔病状〕〔腹証〕を考察すると、次のように成ります。
〔原文〕
假令得肝脉.〔脉状〕
其外證.善潔.面青善怒.〔病状〕
其内證.齊左有動氣.按之牢若痛.〔腹証〕
其病四肢滿.閉癃溲便難.轉筋.〔病状〕
有是者肝也.無是者非也.
〔訓読〕
假令(たと)えば、肝脉をえて、〔脉状〕
其の外証は、潔(きよ)きことを善(この)み、面青く怒ることを善む。〔病状〕
其の内証は、齊の左に動氣あり、之を按(お)せば牢(かた)くして、若(も)しくは痛む。
〔腹証〕
其の病い四肢に滿ち、閉淋(へいりん)して溲便(そうべん)難(むつかし)く、転筋す。〔病状〕
是れあるものは肝なり、是れ無きものは非(あらず)なり。
〔解説〕
例えば、肝脉の弦脉を脉診したならば、〔脉状〕
肝の証が、外に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
清潔好きで汚い事を嫌う精神状態になり、一日に何度も手を洗うとか、外出先のトイレの便器にはおしりを載せられないとか、の行動を取る。また、何事にも怒りっぽくなり顔色が青みを増す。
〔病状〕
肝の証が、内に顕(あらわ)れる病状はどの様になるかと言うと、
齊の左に動悸〔肝の積(しゃく)〕が出る。また、この部を押せば、硬結があったり、圧痛が出たりする。〔腹証〕
肝証の症状として、手足の腱が張り、小便が出なくなり、便秘し、こむら返りが起こる。〔病状〕
こういうものが脉証腹証一致(脉状と証が一致している事)の肝の病である。
この様な症状が無くて弦脉を打っているのは、「肝の病」ではない。
他の証を考えなさいねと。
・
詳しくは
ゆっくり堂の『難経ポイント』第十六難をご覧ください。
解説全文 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/16nan/
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2014.12.11. みゃちゃんブログ掲載
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春夏秋冬の四季の正常脈を知ること。難経十五難.
2014年12月08日
楡(にれ)の葉
弦脉の意味をモット早く正しく知ることが出来たら・・・脈診に磨きがかかったかも。
※ 十五難のポイント其の一は、
難経第十五難、春夏秋冬の四季の正常脈を知ること。
春の脉は弦、
〔原文〕氣來厭厭聶聶.如循楡葉.曰平.
〔訓読〕氣来ること厭厭(えんえん)聶聶(てつてつ)として楡(にれ)の葉を循(なず)るが如しを平と曰う。
〔解説〕春の弦脉は楡葉を聶(ささや)き循るように軟らかく等しく伸びやかに整った脉状を平の正常脈と言う。
夏の脉は鉤、
〔原文〕其脉來累累如環.如循琅玕.曰平.
〔訓読〕其の氣来ること累累として環(たまき)の如く、琅玕(ろうかん)を循(なず)るが如くを平と曰う。
〔解説〕夏の正常な脉は、パッと来てスーッ去る鉤脉がリズミカルに連続して珠の輪(艶と光沢のある真珠のネックレス)を回るが如く流れている脉状を正常な平脉と言う。
秋の脉は微毛、
〔原文〕其脉來藹藹如車蓋.按之益大.曰平.
〔訓読〕其の氣来ること藹藹(あいあい)として車蓋の如く、之を按(お)せば益々大なるを平と曰う。
〔解説〕秋の正常な脉は、穏かに福が集まりふんわりとした脉が流れている脉状を正常な平脉と言う。
冬の脉は石、
〔原文〕脉來上大下兌.濡滑如雀之啄.曰平.
〔訓読〕脉来ること上大下兌(じょうだいかえい)、濡滑にして雀の啄(ついば)むが如き平と曰う。
〔解説〕冬の脉は石脉は、脉が来る時には大きく来て去る時は速い。そして軟らかく滑るよう脉で、常に雀が口ばしを啄(ついば)み続けている様な脉状を正常な平脉と言う。
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詳しくは
ゆっくり堂の『難経ポイント』 難経第十五難 解説全文 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/15nan/
2014.12.08. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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難経を新しいHPにアップ中です。
2014年12月03日
難経を新しいHPにアップ中です。
以前掲載したものですが、
2014.10.25.みゃちゃんブログ掲載より、
「脈診こそは鍼灸師の特権です。 難経 第一難」から順に並べていますので改めて掲載します。
今回は第十難・第十一難・第十二難・第十三難・第十四難まで。
それぞれの本文リンクを掲載します。
難経に興味をもたれている方のご意見をお知らせいただければ幸いです。
・-----------------------
ゆっくり堂の『難経ポイント』 十難 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/10nan/
※ 十難のポイント其の一、十難の「一脉十変」の意味は、
「心」に於ける五つの変化と「小腸」に於ける五つの変化を合わせて十変の脉診と言う事です。
※ 十難のポイント其の二、十変が各臓腑にありますので五十変の脉診がある事になりますね。
※ 十難のポイント其の三、心病脉に於ける一脉十変の表(nk101)を作りました。(文章の後に掲載)
・---------------------------------------
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十一難 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/11nan/
・
※ 十一難のポイント其の一、欠滞脉が顕れる脉泊数の位置で五臓の変調が判る事です。
※ 十一難のポイント其の二、難経十一難「欠滞脉が示す五臓の不調表」を作りました。
(nk0111)文章の後に掲載しています。
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ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十二難 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/12nan/
※ 十二難のポイント其の一、
十二難は鍼医師の誤った治療を糾弾するものです。
※ 十二難のポイント其の二は、
鍼灸師は陰陽虚実の診断を正しくしないと、
反対の治療をして患者を死なせる事があると、厳しく注意喚起するものです。
・----------------------------------
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十三難 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/13nan/
※ 十三難のポイント其の一、
十三難で重要なのは診断に於いて「脉状」を中心にして、各々の五蔵の色体表を診る事です。
※ 十三難のポイント其の二、
五臓の脉状と、五声、五色、五臭、五味には相生と相克の関係があります。
※ 十三難のポイント其の三、
五臓の脉状と尺部とも相応しているのが健康である。
相応しない患者は病気になっているのだと、特に脉状と相剋の色体表は病が重い事になります。
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ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十四難 リンク先
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/14nan/
※ 十四難のポイント其の一は、
十四難は一回の呼吸と脈拍回数の関係に於いての病の診方を述べています。
※ 十四難のポイント其の二は、
健康で正常な脉状は、一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する時です。
※ 十四難のポイント其の三、
もうすぐ病気になる人は、一呼吸に二拍動する遅い脉を打つ人です。
つまり、一回吐く時に脉が一拍動し、一回吸う時に脉が一拍動する状態ですね。
※ 十四難のポイント其の四は、
元気なように見えていて、バタッと倒れて死んでしまう人の脉は、
一呼吸に一拍する遅い脉を打っている人です。そして、この状態を「無魂」と言います。
身体の中に精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。
このような人が無意識に歩行しています。本人は病を感じていません。
この状態を古典では「行尸(あんし)」と言います。
そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
※ 十四難のポイント其の五は、
もう少し人生を楽しみたい方は「腎気」を養う事です。
其の為には、左尺中の脉、即ち腎の脉が消えないように、経絡鍼灸をお受けください。
臨床で、患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、
たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
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2014.12.03. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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正常に脉があるのに死ぬ人がいる。難経第八難より
2014年11月26日
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第八難
難経第八難は脉診をして、正常に脉があるのに死ぬ人がいる。
これはどの様な理由なのかを問うています。
私の臨床経験で過去に一度経験しました。
癌手術の後遺症で身体のあちこちが痛み、昼と夜が逆転して、家人も大変な苦労をされていました。
往診で治療をします。
脈を診ますと、浮・数・実で大の荒々しい脉状です。
ある日から脉が穏になっていました。
一週間後に訪問して、玄関のドアを開けた時、フワリとお線香の匂いがしました。
あの脈が、難経第八難の「寸口脉平」の人の脉なのかと・・・・
※ 井上恵理先生の臨床経験から難経第八難についてこの様に話されました。
経験上、治療をしない方がいい患者について、
病症と脉証とが一致しない、
つまり病気があって脉が病気していない場合は治療をしない方がいい。
身体に色々の症状があって、苦しいとか辛いとか言っているのに、
脉を診ると案外虚実がない平静の脉を打っている。
これは治療をしない方がいい。
癌患者に非常に多く、陰陽虚実が判らない。
これが難経第八難の「寸口脉平」の人達の脉の特徴でもある。と・・・・
ゆっくり堂の『難経ポイント』
※ 八難のポイント其の一は、
人間の生命の源は「先天の気:腎間の動気」です。
※ 八難のポイント其の二は、
目が見えるのも、耳が聞こえるのも、感覚が敏感であるのも、
美味しい物を味わえるのも、全て「先天の気:腎間の動気」が根本である。
人間を草木に例えれば、根が腐れ無くなれば茎も、葉も枯れ落ちて死んでしまうと。
※ 八難のポイント其の三は、
寸口の脉平にして死する者は、生気独り内に絶すなり。とは、
いわゆる突然死、自然死、寿命死、のことです。
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ゆっくり堂の『難経ポイント』第八難の詳細解説全文はこちをご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/8nan/
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2014.11.26. みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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日本の季節と放射能被爆と難経第七難
2014年11月24日
日本の季節と放射能被爆と難経第七難
難経第七難が示唆しているのは、春夏秋冬の日本の四季を考え、
かつ現代社会の放射能被爆や都市熱を考えて、
脉状を考察しなければならないと言う事でしょうか。
ゆっくり堂の『難経ポイント』第七難
※ 七難のポイント其の一は、春夏秋冬の季節に応じて脉状は変化している。
※ 七難のポイント其の二は、一年を六節に分けて、それぞれの脉状を述べてある。
※ 七難のポイント其の三は、鍼灸師は四季に応じた脉状を認識して、季節に合った脉を作る事。
※ 七難のポイント其の四は、
現代社会(先進国)は夏には冷房、冬には暖房、放射能被爆、大気汚染等と自然に身を任せた時代とは異質の状況にある。
よって、これも考慮して脉状を考察しなければならない。
※ 井上恵理先生の難経第七難の纏(まと)めの言葉。
季節と脉の関係で、季節によって脉と言うものは病気に関係なく動いている。
私達の脉は夏に成ると浮いて来て、冬になると沈んで来ます。
それじゃ冬は陰虚に成って、夏は実になるかと言うとそうではない。
これを旺脉と言うと。
脉を診る場合にはこうした季節と言うものも考えなさいと第七難で注意をしている訳です。
全文はゆっくり堂のHP『難経ポイント第七難』をご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/7nan/
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2014.11.24.みゃちゃんブログ掲載
ゆっくり堂鍼灸院 山口一誠
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中脉を診れる鍼灸師のお話し、難経第五難
2014年11月20日
中脉を診れる鍼灸師のお話し、難経第五難
ゆっくり堂の『難経ポイント』第五難
※ 五難のポイント其の一は、
寸関尺を押さえる重さ・深さの比較です。
※ 五難のポイント其の二は、
中脉を診れる鍼灸師になる最初の一歩になります。
五難の解説
五難の解説をします。
脉の軽重とはどう言う事か?
寸関尺と言う脉を診る場合に、
指を押さえるのにどの位の重さで押さえたら良いのかと言う事を問うています。
寸関尺を押さえる重さ・深さの比較です。
右手寸口、肺の部の脉を診る時の、指の重さは
豆三粒の重さで、皮毛のように皮膚にチョッと触った程度で良いと。
血脉は心が主ると言うので心の部・左手の寸口は肺の倍の重さの六菽になります。
脾の部は九菽の重さになる。これは右手の関上の脾の部で、肺の三倍(九菽)になります。
寒は十二菽の重さと言うから、左手寸口心の部(六菽)の倍になります。
腎の部〔左手尺中〕は押して骨に至る迄というのですから、相当深く押せばいいと言う事です。
この様に五臓には脉の深浅によって脉位を定める方法もあります。
※ 豆一粒の重さを一菽(しゅく)と言いますが、この豆が、どの様な豆なのかは明らかにはなっていないけど。
※ 中脉(ちゅうみゃく)について。
(井上恵理先生の講演より。山口一誠の考察文章含む)
脉を取るのに色々な教え方があると思いますが、私はいつもこうゆう診方をしています。
中脉というのがあります。
浮と沈の間にある中脉。
この中脉は六部ともに「胃の気」を診る。
寸口・関上・尺中それぞれの所に中脉がある訳です。
この胃の気・衛気(えき)の脉ですが、身体と言うのは生まれてから後は食物によって栄養されています。
栄養されていると言う事は五臓全ては「胃の気」の支配を受けていると言う事なんです。
その胃の気が、肺の気、肝の気、肝経、腎経、などの全ての経絡に旨く回っているかどうかと言う事を区別するのが「胃の気」を診る事なのです。
中脉の取り方は、上から脉を押さえてまず三部の脉が全部揃っている所がある筈です。
ここが、中脉になります。
そして、そこから沈めた所が陰脉で、浮かした所が陽脉です。
---------------------------------
全文はゆっくり堂のHP『難経ポイント第五難』をご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/5nan-2/
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ゆっくり堂の『難経ポイント』 第四難
2014年11月18日
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第四難
※ 四難のポイント其の一、四難では6つの脉状の形状を述べています。
ゆっくり堂では、脉状診(六祖脉)は浮沈・遅数・虚実の6つの脉を判断します。
『難経』では、脉状に於いて浮沈、長短、滑濇の六脉を基本脉と言っています。
浮、長、滑は陽脉であり、沈、短、濇は陰脉と診ています。
※ 四難のポイント其の二は、陰陽について、呼吸と脉との関係、を述べています。
※ 四難のポイント其の三は、「脉に陰陽の法あり」と言うのは脉だけではなくて、
東洋医学に於いては総ての治療・診断に陰陽を忘れてはいけないと言う事が述べられています。
ゆっくり堂の『難経ポイント』第四難の全文はこちをご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/4nan/
現在の、ゆっくり堂 の 臨床脉診のリンクです。
ご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/sisn/kiru/myk/
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2014.11.18.みゃちゃんブログ掲載
※ 四難のポイント其の一、四難では6つの脉状の形状を述べています。
ゆっくり堂では、脉状診(六祖脉)は浮沈・遅数・虚実の6つの脉を判断します。
『難経』では、脉状に於いて浮沈、長短、滑濇の六脉を基本脉と言っています。
浮、長、滑は陽脉であり、沈、短、濇は陰脉と診ています。
※ 四難のポイント其の二は、陰陽について、呼吸と脉との関係、を述べています。
※ 四難のポイント其の三は、「脉に陰陽の法あり」と言うのは脉だけではなくて、
東洋医学に於いては総ての治療・診断に陰陽を忘れてはいけないと言う事が述べられています。
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天寿の脈
2014年11月01日
天寿の脈
天から預かった寿命
天寿を全うした時に打つ脉状があります。
難経 第三難にはそんなことが述べられています。
「大往生」寿命で死ぬ人の脉です。
これを「真藏の脉」「胃の気がない脉」と言い、
この脈は病気が無くても死ぬ人の脉状です。
〔井上恵理先生解説補足〕
「格関覆溢の脉」を打っている本人は別に病気もなく余り苦しみも無い状態である。
「人病まずして死す」「大往生」寿命で死ぬ人の脉です。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/3nan/
脈診研修会を開催します。
個別指導、参加随意、指導料相談にて、ゆっくり堂までご連絡ください。
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2014.1.1.みゃちゃんブログ掲載
陰陽の脉診が出来る鍼灸院
2014年10月30日
陰陽の脉診が出来る鍼灸院
小児の健康には小児はりが効果的です。
熟年を困らせる五十肩の夜間痛の改善にも鍼灸が効果的です。
その為には陰陽の脉診が出来る鍼灸院を選びましょう。
難経、第二難 にはそんな法則が述べられています。
ゆっくり堂の『難経ポイント』
※ 二難のポイント其の一は、
二難は尺寸の脉診(診察)で、陰陽の脉状を知る要の理論が展開されています。
※ 二難のポイント其の二は、
脉位の幅は「一寸九分」であり、この尺寸の幅で険脉を行う事を規定しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/2nan/
2014.10.30.みゃちゃんブログ掲載
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脈診こそは鍼灸師の特権です。
2014年10月25日
脈診こそは鍼灸師の特権です。
難経「第一難」にはその大事な話が記載されています。
鍼灸師のバイブル難経を学びましょう。
赤ちゃんの健康のために。
高齢者の健康のために。
ゆっくり堂の『難経ポイント』 難経 第一難
※ 難経「一難」のポイントは、六部定位診(ろくぶじょういしん)を確定した点である。
六部定位診とは、前腕部、橈骨動脈の流れを診ることで、五臓六腑、全身の状態が判り、
疾病により死ぬか生きるか、病気が治るか、病気が治らないかが診断できると言う事です。
※ 一難のポイント其の二は、
経絡鍼灸の本治法の治療効果が本格的に出だすのは、
治療日の次の日からです。
一日五十回転の気の循環で気の一巡が完了するからでしょうね。
※ 初めに難経 第一難をHPにアップしたのは、一年ぐらい前でした。
この頃よりは、少し考察力もついてきたのでしょうか。
臨床と結び付けて難経第一難が読める様になったかな・・・・
HPリニューアルでまた、
旧文を読みかえしながら難経を全部掲載したいです。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://yukkurido.jp/keiro/nankei/1nan/
2014.10.25.みゃちゃんブログ掲載
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難経 第八十一難
2014年07月02日
難経 第八十一難
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第八十一難 ank081
※ 八十一難のポイント其の一は、
難経も最終章の81番目まで、
読み進み、同時に臨床に役立ててきた鍼灸師は、
まだ、上工(上級の鍼師)の鍼術には及ばないが、
中工(中級の鍼師)として、
患者の病態を改善の方向に導く実力が着いて来ている。
そのような時期に「脉診だけで虚実の診断治療を行う」誤りを犯すしやすいものである。
だからこそ、
最終章の八十一難に於いて、
病体の心身全体の虚実の診断治療をしなさいと、
鍼灸師の心得をのべ、
上工(上級の鍼師)への鍼術を磨きなさいと導きの言葉で終えています。
ーーーーーーーーーーーーー
難経 第八十一難 原文
八十一難曰.
經言.
無實實虚虚.
損不足而益有餘.
是寸口脉耶.
將病自有虚實耶.
其損益奈何.
然.
是病非謂寸口脉也.
謂病自有虚實也.
假令肝實而肺虚.肝者木也.肺者金也.
金木當更相平.
當知金平木.
假令肺實而肝虚微少氣.用鍼不補其肝.
而反重實其肺.
故曰實實虚虚.
損不足而益有餘.
此者中工之所害也.
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
--------------------------
八十一難の訓読
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
八十一難に曰く。
経に言う。
実を実し、虚を虚し、
不足を損(そん)じ有余を益(ま)すこと無かれとは。
是寸口の脉なりや、
將(ま)た病(やまい)自ら虚実ありや、
其の損益(そんえき)奈何(いかん)。
然(しか)るなり。
寸口の脉を謂(い)うにあらざるなり。
病自らの虚実あるを謂うなり。
仮令(たとえ)ば肝実して肺虚す、肝は木なり、肺は金なり、
金木当(まさ)に更々(かわるがわる)相(あい)平ぐべし、
当(まさ)に金木を平ぐことを知るべし。
仮令ば肺実して肝虚す、微少の氣、鍼を用いて其の肝を補(おぎなわ)ずして、
反(かえ)って重(かさ)ねて其の肺を実す。
故に実を実し、虚を虚し、不足を損(そん)じ有余を益(ま)すと曰う。
此れ中工の害する所なり。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
--------------------------
八十一難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
八十一難の解説をします。
黄帝内経・霊枢・から考察するに。
鍼の治療に於いて、
実しているものを実したり、虚しているものを虚せしめたり、
足らないものに損をかけたり、余っているのに余計なものを与えたりの「治療」があるが、
これは脉診だけで虚実の診断を決めて治療する事なのか、
又は病体の心身全体の虚実の診断をして、治療する事なのか、回答しなさい。
お答えします。
脉診だけで虚実の診断を決めてはいけません。
病体の心身全体の虚実の診断をして治療します。
例えば肺虚肝実証のとき、肝は木なり、肺は金なりの金剋木と言う相克関係において、
肺金と肝木は相手の勢いが強くなりすぎない様に平衡を保つ抑制が働くのだと。
①肝木実すれば、金剋木の自然治癒力が肺金に湧きあがり身体の均衡を保つ。
②肝木実には金剋木の相克治療で肺金を補う補法をして木と金のバランスを平衡にしなさいと。
鍼の治療方針を間違って、
例えば、肝虚肺実証に対して肺の補法を行うと、
肺実をさらに実し、肝虚をさらに虚し、
肝虚の不足をさらに減らし、肺実の有余をさらに増やす、間違った治療になる。
これらの間違った診断治療は中級の鍼師が陥る所であると。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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八十一難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕八十一難曰.
〔訓読〕八十一難に曰く。
〔解説〕八十一難の解説をします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・から考察するに。
〔原文〕無實實虚虚.
損不足而益有餘.
是寸口脉耶.
將病自有虚實耶.
其損益奈何.
〔訓読〕実を実し、虚を虚し、
不足を損(そん)じ有余を益(ま)すこと無かれとは。
是寸口の脉なりや、
將(ま)た病(やまい)自ら虚実ありや、
其の損益(そんえき)奈何(いかん)。
〔解説〕鍼の治療に於いて、
実しているものを実したり、虚しているものを虚せしめたり、
足らないものに損をかけたり、余っているのに余計なものを与えたりの「治療」があるが、
これは脉診だけで虚実の診断を決めて治療する事なのか、
又は病体の心身全体の虚実の診断をして、治療する事なのか、回答しなさい。
〔解説補足〕ここでの問文での虚実・不足、有余は同じ意味です。
虚を虚しは、不足を損じと同義です。 実を実しは、有余を益すと同義です。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕是病非謂寸口脉也.
謂病自有虚實也.
〔訓読〕寸口の脉を謂(い)うにあらざるなり。
病自らの虚実あるを謂うなり。
〔解説〕脉診だけで虚実の診断を決めてはいけません。
病体の心身全体の虚実の診断をして治療します。
〔原文〕假令肝實而肺虚.肝者木也.肺者金也.
金木當更相平.
當知金平木.
〔訓読〕仮令(たとえ)ば肝実して肺虚す、肝は木なり、肺は金なり、
金木当(まさ)に更々(かわるがわる)相(あい)平ぐべし、
当(まさ)に金木を平ぐことを知るべし。
〔解説〕例えば肺虚肝実証のとき、肝は木なり、肺は金なりの金剋木と言う相克関係において、
肺金と肝木は相手の勢いが強くなりすぎない様に平衡を保つ抑制が働くのだと。
①肝木実すれば、金剋木の自然治癒力が肺金に湧きあがり身体の均衡を保つ。
②肝木実には金剋木の相克治療で肺金を補う補法をして木と金のバランスを平衡にしなさいと。
〔原文〕假令肺實而肝虚微少氣.用鍼不補其肝.
而反重實其肺。
故曰實實虚虚.
損不足而益有餘.
〔訓読〕仮令ば肺実して肝虚す、微少の氣、鍼を用いて其の肝を補(おぎなわ)ずして、
反(かえ)って重(かさ)ねて其の肺を実す。
故に実を実し、虚を虚し、不足を損(そん)じ有余を益(ま)すと曰う。
〔解説〕鍼の治療方針を間違って、
例えば、肝虚肺実証に対して肺の補法を行うと、
肺実をさらに実し、肝虚をさらに虚し、
肝虚の不足をさらに減らし、肺実の有余をさらに増やす、間違った治療になる。
〔原文〕此者中工之所害也.
〔訓読〕此れ中工の害する所なり。
〔解説〕これらの間違った診断治療は中級の鍼師が陥る所である。
〔解説補足〕
難経も最終章の81番目まで、読み進み、同時に臨床に役立ててきた鍼灸師は、
まだ、上工(上級の鍼師)の鍼術には及ばないが、
中工(中級の鍼師)として、患者の病態を改善の方向に導く実力が着いて来ている。
そのような時期に「脉診だけで虚実の診断治療を行う」誤りを犯すしやすいものである。
だからこそ、最終章の八十一難に於いて、病体の心身全体の虚実の診断治療をしなさいと、
鍼灸師の心得をのべ、上工(上級の鍼師)への鍼術を磨きなさいと導きの言葉で終えています。
2014.7.2. 掲載日。
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そのほかの、
難経解説をご覧になりたい方は、
こちらのHPをご覧ください。
http://you-sinkyu.ddo.jp/ank00.html
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八十難の臨床解説、
2014年06月22日
難経 第八十難
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第八十難 ank080
※ 八十難のポイント其の一、
難経、八十難は「気を感知」して、刺入と抜鍼を行う刺鍼法の法則が展開されています。
※ 八十難のポイント其の二、
刺入の法則とは、気が現われた事を感じて、その後に刺入すること。
※ 八十難のポイント其の三、
抜鍼の法則とは、補法でも瀉法でも気の変化が現われた事を感じて、その後に抜鍼すること。
※ 八十難のポイント其の四、
難経、八十難を本当に理解するには「気を集める」鍼の技術がないと知る事が出来ません。
※ 八十難のポイント其の五、
左手(押手)に「気が来る」事が本当に判るには、
右手(刺手)で鍼をを微細に動かす弾法や撚法などの「気を集める」技術が必要です。
※ 八十難の臨床解説、
「五十肩痛の改善例」ゆっくり堂鍼灸院の臨床例から、難経八十難を解説します。
※ 井上恵理先生の難経、第八十難の解説:経絡鍼療(501号)よりの抜粋を掲載しています。
(井上恵理先生の難経、第八十難の解説を参考にして山口一誠が文章を構成しています。)
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難経 第八十難 原文
八十難曰.
經言.
有見如入.有見如出者.何謂也.
然.
所謂有見如入者.
謂左手見氣來至.乃内鍼.
鍼入見氣盡.乃出鍼.
是謂有見如入.有見如出也.
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
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八十難の訓読
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
八十難に曰く。
経に言う。
見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て入れ、
見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て出(いだ)すとは、
何(なん)の謂(いい)ぞや。
然(しか)るなり。
所謂(いわゆ)る見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て入れるとは、
謂(いわゆ)る左手に見(あらわ)るる氣来り至(いた)って、乃ち鍼を内(い)れ、
鍼入れて見(あらわ)るる気尽きて、乃ち鍼を出(いだ)す。
是(こ)れ見るること有て如て入れ、見るること有て如て出すと謂(い)うなり。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
--------------------------
八十難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
八十難の解説をします。
難経理論から考察すると。
気が現われて、気を感じた後に、鍼を刺入するとあり、
刺入した鍼尖に新たに気の変化が現われ、あるいは気の充実を感じたら抜鍼するとは、
如何なる手法であるか、またその生体現象を説明しなさい。
お答えします。
気が現われる事が有って、後に鍼を刺入すると言うことは、
鍼尖を穴に接触して気を得る手技をしていると、
押手(左手)に気が来るのを感じる事ができ、そこに至った後に鍼を刺入しなさいと。
鍼の刺入中に気の変化が現われた後に、抜鍼しなさいと。
瀉法の場合の、「気尽きて」の意味は、『充実した気が無くなった時』に鍼をソーッと抜く事。
補法の場合の、「気尽きて」の意味は、『気が充実し尽した時』に鍼をすばやく抜く事。
気が現われた後に刺入し、補法・瀉法の変化が現われた後に抜鍼する。
これが八十難の法則ですと。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
--------------------------
八十難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕八十難曰.
〔訓読〕八十難に曰く。
〔解説〕八十難の解説をします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕難経理論から考察すると。
〔原文〕有見如入.有見如出者.何謂也.
〔訓読〕見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て入れ、
見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て出(いだ)すとは、
何(なん)の謂(いい)ぞや。
〔解説〕気が現われて、気を感じた後に、鍼を刺入するとあり、
刺入した鍼尖に新たに気の変化が現われ、あるいは気の充実を感じたら抜鍼するとは、
如何なる手法であるか、またその生体現象を説明しなさい。
〔解説補足〕ここは、補瀉の手技において、押手、刺手での操作により、気の変化を感じての、
刺入・抜鍼の頃合いがありますが、その説明を求めています。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕所謂有見如入者.
謂左手見氣來至.乃内鍼.
鍼入見氣盡.乃出鍼.
是謂有見如入.有見如出也.
〔訓読〕所謂(いわゆ)る見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て入れるとは、
謂(いわゆ)る左手に見(あらわ)るる氣来り至(いた)って、乃ち鍼を内(い)れ、
鍼入れて見(あらわ)るる気尽きて、乃ち鍼を出(いだ)す。
是(こ)れ見るること有て如て入れ、見るること有て如て出すと謂(い)うなり。
〔解説〕
気が現われる事が有って、後に鍼を刺入すると言うことは、
鍼尖を穴に接触して気を得る手技をしていると、
押手(左手)に気が来るのを感じる事ができ、そこに至った後に鍼を刺入しなさいと。
鍼の刺入中に気の変化が現われた後に、抜鍼しなさいと。
瀉法の場合の、「気尽きて」の意味は、『充実した気が無くなった時』に鍼をソーッと抜く事。
補法の場合の、「気尽きて」の意味は、『気が充実し尽した時』に鍼をすばやく抜く事。
気が現われた後に刺入し、補法・瀉法の変化が現われた後に抜鍼する。
これが八十難の法則ですと。
--------------------------
〔解説補足〕
ゆっくり堂鍼灸院の臨床例から、難経八十難を解説します。
女性51歳、主訴は右の五十肩様の痛み。夜間痛あり。(1年前より。)
可動域角度:肩関節前方挙上角度100度。 肩甲帯屈曲10度でロックされ伸展できない。
(寝床に肩が着かない、肩が前に出ている状態。)この可動域を超えると痛みが出る。
切経:右肩背部の肩リョウ穴から天リョウ穴のライン上の、2か所に母指大の硬結圧痛部位がある。
当院は経絡鍼灸の手技を基本としていますので本治法と標治法の処置で病状改善を行っていますが、
今回の記述は、標治法の手技のみを述べて、難経八十難の臨床的解説してみます。
硬結圧痛部位に対する標治法から、
施術に使用した鍼は、銀鍼の9×8-2番です。
① 右肩背部の、母指大の硬結圧痛部位に対して、浅補深瀉の手法で施術を処置しました。
1、刺鍼の手法。(撚鍼法にて。)
2、押手(左手)を構え、鍼尖を痛みなくゆっくりと穴に接触。
3、刺手(右手)の手法は、示指を下にして母指を上に位置して、鍼柄を柔らかく挟み。
4、挟んだ鍼柄を示指は動かさず、母指のみを鍼尖の方向にむけて、鍼柄を撫でる手法を施す。
※ この「鍼柄を撫でる」手技は鍼尖の部位に催気を促す事なのだと思います。
「鍼柄を撫でる」手技を3秒~10秒ほど、撫でる回数では10回~30回ほど、やっていますと、
催気(氣來至)を感じます。
(鍼尖に気が集まる感じ、気が来る感じ、を知覚します。)
(気の形状は金平糖様で、直径1ミリぐらいです。そこに僅かに温かみも出て来ます。)
5、気を得た様に感じたら、鍼柄を軽く挟み、ソーッと押すと鍼尖が刺入し進んで行きます。
※ これら一連の認知行動が、難経八十難の「刺入の法則」ことだと思います。
〔原文〕『謂左手見氣來至.乃内鍼.』
〔訓読〕謂(いわゆ)る左手(押手)に見るる氣来り至(いた)って、乃ち鍼を内(い)れる。
〔解説〕押手(左手)に気が来るのを感じる事ができ、そこに至った後に鍼を刺入しなさいと。
6、浅補部にて、充分に補法を行い。さらに鍼尖が進むと目的の硬結部位に到達する。
7、硬結部位に到達したらこの硬結を緩める手技として、鍼の抜き差し旋回を施します。
8、硬結部位の緩めが完了したら、(邪実した気が無くなった時)
9、深瀉部はゆっくりとソーッと鍼を引き上げ、
10、浅補部からは押手の左右圧をスーッ加え、すばやく抜鍼と同時に、鍼口を閉じる補法を行う。
※ そしてこれがまた、難経八十難「抜鍼法則」の臨床になると思います。
〔原文〕「鍼入見氣盡.乃出鍼.」
〔訓読〕鍼入れて見(あらわ)るる気尽きて、乃ち鍼を出(いだ)す。
〔解説〕鍼の刺入中に気の変化が現われた後に、抜鍼しなさいと。
瀉法の場合の、「気尽きて」の意味は、『充実した気が無くなった時』に鍼をソーッと抜く事。
補法の場合の、「気尽きて」の意味は、『気が充実し尽した時』に鍼をすばやく抜く事。
追記:この患者さんの場合は、週に1回の治療をしています。
来院7回目の肩関節可動域角度を点検しましたところ、
患者の病状は、次のように改善されています。
可動域角度:肩関節前方挙上角度170度・肩肩甲帯伸展屈曲各20度で正常になる。
肩の痛み、夜間痛は消失しています。
--------------------------
〔井上恵理先生の難経、第八十難の解説:経絡鍼療(501号)より、抜粋。〕
※ 難経、八十難は「鍼を刺す時の鍼師の心構え・考え方」を顕している。
「見(あらわ)るること有(あっ)て如(しかし)て入れ、」とは、
この刺入の法則には鍼師の術の手技の前段行為がある。
ツボを探ったならば、そこをよく撫で擦って押して或は叩いて弾いて、
そこに気を「集める事」を第一の段階とする。
そして第二の段階として、気が現われて、気を感じた後に、鍼を刺入するのだと。
「気尽きて乃ち鍼を出す」とは、
例えば、
瀉法の場合の、「気尽きて」と言う事は、『充実した気が無くなった時』に鍼を出す。
補法の場合の、「気尽きて」と言う事は、『気が充実し尽した時に』鍼をソーッと抜く。
「気」は全て左手(押手)に感ずる事なのだと。
左手(押手)に感ずる所の気の虚実・気の出入りあるいは気の充実と言う事を無視して、
ただ鍼を入れさえすればいいのだと言うのは間違いなんです。
本治法の五井穴の治療に於いて最も良く判る事ですね。
五井穴には殆ど脉があります。ですから虚している時に補う方法を取ると、
初め鍼を刺す時 には幾ら撫で擦ってもなかなか脉は出て来ない。
ところが鍼を刺して弾法をし或は捻法をし、或は静かに動かす事によって脉がポコッと、
出てくる事がある。ここに取ればいい。
或は柔らかく感じた所が左手の親指の下に重く感じた時に鍼を抜く。
何故左手で押さえながら右手で鍼を弾いたり撚法したり右手を動かすのかと。
※ これは我々の意識を右の手に用いるから、
右の手を動かさないと左手に「気が」来る事が判らない。
※ 右の手を動かす事によって左手の方が何かを診ると言う力が無くなる。
虚無の状態になる。
そこで初めて本当の鍼の気の来る事が判る。
※ 左手(押手)に「気が」来る事が本当に判るには、
右手で鍼を弾いたり撚法したり右手を動かす事であると。
--------------------------
そのほかの、
難経解説をご覧になりたい方は、
こちらのHPをご覧ください。
http://you-sinkyu.ddo.jp/ank00.html
----------------------------------------
掲載日:2014.6.22.
微妙微細な鍼術 七十九難
2014年06月18日
難経 第七十九難
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第七十九難 ank079
※ 七九難のポイント其の一は、
「得るが若く、失が若し」の感性が鍼灸師の腕を左右します。
補瀉の処置で微妙な虚実の「得るが若く、失が若し」の感覚があります。
それは、
補法を行った時には、何かが出てきたような感じ。なかったものが有る様な感じ。
補法はあくまでも生気を補われ、身体が少し満たされる様な感じを覚える状態かな。
瀉法を行った時には、有った物が無くなった様な感じを覚える。
瀉法は身体に必要ないものが無くなり、身体が楽になった様な感じを覚える状態かな。
難経 第七九難 原文
七十九難曰.
經言.
迎而奪之.安得無虚.
隨而濟之.安得無實.
虚之與實.若得若失.
實之與虚.若有若無.何謂也.
然.
迎而奪之者.瀉其子也.
隨而濟之者.補其母也.
假令心病.瀉手心主兪.是謂迎而奪之者也.
補手心主井.是謂隨而濟之者也.
所謂實之與虚者.牢濡之意也.
氣來實牢者爲得.濡虚者爲失.故曰若得若失也.
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
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七九難の訓読
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(498号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
七十九難に曰く。
経に言う。
迎(むか)えて之を奪わば、 安(いずくんぞ)虚なきことを得ん、
隨(したが)って之を濟(すく)わば、 安(いずくんぞ)実なきことを得ん。
虚と実とは、得(う)るが若(ごと)く、失(うしな)が若(ごと)し。
実と虚とは、有が若く無が若しとは、何の謂(いい)ぞや。
然(しか)るなり。
迎えて之を奪うとは、其の子を瀉するなり。
隨って之を濟うとは、其の母を補うなり。
假令(例え)ば心病は、手の心主の兪を瀉す、是れ謂(いわゆ)る迎えて之を奪うものなり。
手の心主の井を補う、是れ謂る隨って之を濟うものなり。
いわゆる実と虚とは、牢(ろう)濡(なん)の意なり。
氣來ること、実牢なるものを得るとなし、濡虚なるものを失となす。
故に曰く、得るが若く、失が若しと。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七九難の解説
(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(498号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
七十九難の解説をします。
黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇から考察するに。
迎えて之(邪実)を奪わば(瀉法すれば)、実が取れて身体は平常の健康体に成ります。
隨って之(虚)を濟わば(補法すれば)、生気が補われ身体は平常の健康体に成ります。
補瀉の処置で微妙な虚実の「得るが若く、失が若し」の感覚があります。
それは、
補法を行った時には、何かが出てきたような感じ。なかったものが有る様な感じ。
補法はあくまでも生気を補われ身体が少し満たされる様な感じを覚える状態かな。
瀉法を行った時には、有った物が無くなった様な感じを覚える。
瀉法は身体に必要ないものが無くなり身体が楽になった様な感じを覚える状態かな。
病証としての虚と実は有るようで無いような物とう言うが、これについて説明しなさい。
お答えします。
五行の相生循環に於いての迎隨。
心病を例にとって自穴内の相生循環に於いて、木火土の関係にての迎瀉・隨補です。
迎瀉の手法:心病の栄火自穴に対して兪土原子穴(大陵穴)の施術は「其の子を瀉す」
「前の方のツボ」「経の流れの前から瀉す」「迎えて之(邪実)を奪う」と言う事になります。
隨補の手法:心病の栄火自穴に対して井木母穴(中衝穴)の施術は「其の母を補う」
「後ろから助ける」「経に随って補法」「隨って之(生気)を濟(すく)う」事になります。
所謂る実と虚とは、硬い所、軟らかい所の意味です。
軟らかい所を、崔気し、生気を充実すれば、「得るが若き」補法となる。
硬結を緩める手技は「失ったが若し」の瀉法となる。
この様に、古より鍼術は微妙微細な「得るが若く、失が若し」の感性が必要ですと。
西暦2014年の現在では難経の時代よりも更に微妙微細な「故曰若得若失也」の鍼術が必要ですね。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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七九難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(498号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕七十九難曰.
〔訓読〕七十九難に曰く。
〔解説〕七十九難の解説をします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇から考察するに。
〔原文〕迎而奪之.安得無虚.
隨而濟之.安得無實.
〔訓読〕迎(むか)えて之を奪わば、 安(いずくんぞ)虚なきことを得ん、
隨(したが)って之を濟(すく)わば、 安(いずくんぞ)実なきことを得ん。
〔解説〕迎えて之(邪実)を奪わば(瀉法すれば)、実が取れて身体は平常の健康体に成ります。
隨って之(虚)を濟わば(補法すれば)、生気が補われ身体は平常の健康体に成ります。
〔解説補足〕補瀉には迎隨(げいずい)と言う手法がある。
〔原文〕虚之與實.若得若失.
〔訓読〕虚と実とは、 得(う)るが若(ごと)く、失(うしな)が若(ごと)し。
〔解説〕補瀉の処置で微妙な虚実の「得るが若く、失が若し」の感覚があります。
それは、
補法を行った時には、何かが出てきたような感じ。なかったものが有る様な感じ。
補法はあくまでも生気を補われ身体が少し満たされる様な感じを覚える状態かな。
瀉法を行った時には、有った物が無くなった様な感じを覚える。
瀉法は身体に必要ないものが無くなり身体が楽になった様な感じを覚える状態かな。
〔原文〕實之與虚.若有若無.何謂也.
〔訓読〕実と虚とは、有が若く無が若しとは、何の謂(いい)ぞや。
〔解説〕病証としての虚と実は有るようで無いような物とう言うが、これについて説明しなさい。
〔解説補足〕ここでの虚実は「病証」です。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕迎而奪之者.瀉其子也.
隨而濟之者.補其母也.
假令心病.瀉手心主兪.是謂迎而奪之者也.
補手心主井.是謂隨而濟之者也.
〔訓読〕迎えて之を奪うとは、其の子を瀉するなり。
隨って之を濟うとは、其の母を補うなり。
假令(例え)ば心病は、手の心主の兪を瀉す、是れ謂(いわゆ)る迎えて之を奪うものなり。
手の心主の井を補う、是れ謂る隨って之を濟うものなり。
〔解説〕五行の相生循環に於いての迎隨。
心病を例にとって自穴内の相生循環に於いて、木火土の関係にての迎瀉・隨補です。
迎瀉の手法:心病の栄火自穴に対して兪土原子穴(大陵穴)の施術は「其の子を瀉す」
「前の方のツボ」「経の流れの前から瀉す」「迎えて之(邪実)を奪う」と言う事になります。
隨補の手法:心病の栄火自穴に対して井木母穴(中衝穴)の施術は「其の母を補う」
「後ろから助ける」「経に随って補法」「隨って之(生気)を濟(すく)う」事になります。
〔解説補足〕 1、 迎隨(げいずい)と言う言葉には2つの捉え方がある。
1-1:経絡の流注に対しての刺鍼の方向での迎隨。
①経絡の流れる方向に迎う刺鍼は瀉法です。 (迎瀉)(経に逆らって瀉法)
②経絡の流れる方向に隨っての刺鍼は補法です。(隨補)(経に随って補法)
1-2:五行の相生循環に於いての迎隨。
心病を例にとって自穴内の相生循環に於いて、木火土の関係にての(迎瀉隨補)です。
①迎瀉の手法:心病の栄火自穴に対して兪土原子穴(大陵穴)の施術は「其の子を瀉す」
「前の方のツボ」「経の流れの前から瀉す」「迎えて之(邪実)を奪う」と言う事になります。
②隨補の手法:心病の栄火自穴に対して井木母穴(中衝穴)の施術は「其の母を補う」
「後ろから助ける」「経に随って補法」「隨って之(生気)を濟(すく)う」事になります。
〔原文〕所謂實之與虚者.牢濡之意也.
氣來實牢者爲得.濡虚者爲失.
故曰若得若失也.
〔訓読〕いわゆる実と虚とは、牢(ろう)濡(なん)の意なり。
氣來ること、実牢なるものを得るとなし、濡虚なるものを失となす。
故に曰く、得るが若く、失が若しと。
〔解説〕所謂る実と虚とは、硬い所、軟らかい所の意味です。
軟らかい所を、崔気し、生気を充実すれば、「得るが若き」補法となる。
硬結を緩める手技は「失ったが若し」の瀉法となる。
この様に、古より鍼術は微妙微細な「得るが若く、失が若し」の感性が必要ですと。
〔解説補足〕ここでは、病症の診断的にも治療法的にも「牢濡」の説明です。
①診断的「牢濡」とは、身体を切経(触診診断)して、
堅牢なる(硬い)所、ここを実と言い、濡なる(軟らかい)所、ここを虚と言う。
脉診に於いても、同様に牢濡、虚実があります。
②治療法的「牢濡」と「得るが若く、失が若し」とは、
②-1:堅牢なる(硬い)所に、瀉法を行い軟らかくすれば、即ち「失ったが若し」となる。
本治法において、堅い脉を幾分でも柔らかくできれば「失ったが若し」の瀉法となる。
標治法においても、硬結を緩める手技は「失ったが若し」の瀉法となる。
②-2:濡なる(軟らかい)所を、崔気し、生気を充実すれば、「得るが若き」補法となる。
西暦2014年の現在では難経の時代よりも更に微妙微細な「故曰若得若失也」の鍼術が必要ですね
詳しくはこちらのHPの下段の
初学者用経絡鍼灸教科書の
難経コーナーからご覧ください。
http://you-sinkyu.ddo.jp/ank00.html
バタッと倒れて死んでしまう人の脉は()
2014年04月23日
十四難
詳しくはこちらのHPの下段の
初学者用経絡鍼灸教科書バナーの
難経コーナーからご覧ください。
http://www.yukkuridou.com/
難経 第十四難
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十四難 ank014
※ 十四難のポイント其の一は、
十四難は一回の呼吸と脈拍回数の関係に於いての病の診方を述べています。
※ 十四難のポイント其の二は、
健康で正常な脉状は、一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する時です。
※ 十四難のポイント其の三、
もうすぐ病気になる人は、一呼吸に二拍動する遅い脉を打つ人です。
つまり、一回吐く時に脉が一拍動し、一回吸う時に脉が一拍動する状態ですね。
※ 十四難のポイント其の四は、
元気なように見えていて、バタッと倒れて死んでしまう人の脉は、
一呼吸に一拍する遅い脉を打っている人です。そして、この状態を「無魂」と言います。
身体の中に精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。
このような人が無意識に歩行しています。本人は病を感じていません。
この状態を古典では「行尸(あんし)」と言います。
そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
※ 十四難のポイント其の五は、
もう少し人生を楽しみたい方は「腎気」を養う事です。
其の為には、左尺中の脉、即ち腎の脉が消えないように、経絡鍼灸をお受けください。
臨床で、患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、
たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
難経 第十四難
難経 第十四難 原文
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
十四難曰.
脉有損至.何謂也.
然.
至之脉.一呼再至曰平.三至曰離經.四至曰奪精.五至曰死.六至曰命絶.此至之脉也.
何謂損.一呼一至曰離經.二呼一至曰奪精.三呼一至曰死.四呼一至曰命絶.此謂損之脉也.
至脉從下上.損脉從上下也.
損脉之爲病.奈何.
然.
一損損於皮毛.皮聚而毛落.
二損損於血脉.血脉虚少.不能榮於五藏六府也.
三損損於肌肉.肌肉消痩.飮食不爲肌膚.
四損損於筋.筋緩不能自收持也.
五損損於骨.骨痿不能起於牀.
反此者至於收病也.
從上下者.骨痿不能起於牀者死.
從下上者.皮聚而毛落者死.
治損之法奈何.
然.
損其肺者.益其氣.
損其心者.調其榮衞.
損其脾者.調其飮食.適其寒温.
損其肝者.緩其中.
損其腎者.益其精.
此治損之法也.
脉
有一呼再至.一吸再至.
有一呼三至.一吸三至.
有一呼四至.一吸四至.
有一呼五至.一吸五至.
有一呼六至.一吸六至.
有一呼一至.一吸一至.
有再呼一至.再吸一至.
有呼吸再至.
脉來如此.何以別知其病也.
然.
脉來一呼再至.一吸再至.不大不小.曰平.
一呼三至.一吸三至.爲適得病.前大後小.即頭痛目眩.前小後大.即胸滿短氣.
一呼四至.一吸四至.病欲甚.脉洪大者.苦煩滿.沈細者.腹中痛.滑者傷熱.濇者中霧露.
一呼五至.一吸五至.其人當困.沈細夜加.浮大晝加.不大不小.雖困可治.其有大小者.爲難治.
一呼六至.一吸六至.爲死脉也.沈細夜死.浮大晝死.
一呼一至.一吸一至.名曰損.人雖能行.猶當著牀.所以然者.血氣皆不足故也.
再呼一至.再吸一至.名曰無魂.無魂者當死也.人雖能行.名曰行尸.
上部有脉.下部無脉.其人當吐.不吐者死.
上部無脉.下部有脉.雖困無能爲害也.
所以然者.譬如人之有尺.樹之有根.枝葉雖枯槁.根本將自生.
脉有根本.人有元氣.故知不死.
十四難の訓読
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
十四難に曰く。
脉に損至ありとは、何の謂ぞや。
然(しか)るなり。
至の脉は、一呼に再至を平と曰い、三至を離経(りけい)と曰い、四至を奪精と曰い、
五至を死と曰い、六至を命絶と曰う。此れ至の脉なり。
何をか損と謂う、一呼一至を離経(りけい)と曰い、二呼(再呼)一至を奪精と曰い、
三呼一至を死と曰い、四呼一至を命絶と曰う。此れ損脉の謂いなり。
至脉は下より上(のぼ)り、損脉は上より下(くだ)るなり。
損脉の病たること、いかん。
然(しか)るなり。
一損は皮毛を損す、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ。
二損は血脉を損す、血脉虚少にして、五臓六腑を榮すること能わず。
三損は肌肉を損す、肌肉消痩して、飲食も肌膚の為ならず。
四損は筋を損す、筋緩んで自ら収持すること能わず。
五損は骨を損す、骨痿(な)えて床に起こと能わず。
此に反する者は至脉の病なり。
上より下る者は、骨痿て床に起つこと能わざる者は死す。
下より上る者は、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ者は死す。
損を治するの法いかに。
然(しか)るなり。
其の肺を損する者は、其の気を益す。
其の心を損する者は、其の榮衞を調(ととの)える。
其の脾を損する者は、其の飲食を調え、其の寒温に適(かな)う。
其の肝を損する者は、其の中を緩(ゆる)くす。
其の腎を損する者は、其の精を益す。
此れ損を治するの法なり。
脉に、一呼再至、一吸再至あり。一呼三至、一吸三至あり。一呼四至、一吸四至あり、
一呼五至、一吸五至あり。一呼六至、一吸六至あり。一呼一至、一吸一至あり。
再呼一至、再吸一至あり。呼吸再至あり。
脉来ることこの如き、何を以ってか其の病を別ち知らん。
然(しか)るなり。
脉来ること一呼に再至、一吸に再至、大ならず小ならず、平と曰う。
一呼に三至、一吸に三至、適(はじ)めて病を得るとなす。
前(まえ)大、後(うしろ)少なるは、即ち頭痛目眩。前小後大は。即ち胸滿短氣。
一呼に四至、一吸に四至は、病甚しからんと浴す。
脉洪大なる者は、煩滿を苦しむ。脉沈細なる者は、腹中痛む。
脉滑(カツ)なる者は、熱に傷れ、脉濇(ショク)なる者は、霧露(むろ)に中(あて)たるる。
一呼に五至、一吸に五至、其の人当に困すべし、
沈細なる者は夜加わり、浮大なる者は昼加わる、大ならず小ならずは、困すと雖(いえど)も治すべし、
其の大小ある者は、治し難(がた)し。
一呼に六至、一吸に六至は、死脉となすなり。沈細なる者は夜死し、浮大なる者は昼死す。
一呼一至.一吸一至.名曰損.
人能(よ)く行くと雖(いえど)も、猶(なお)當(まさ)に床に着くべし、
然る所以の者は、血氣皆不足するが故なり。
再呼に一至、再吸に一至、名付けて無魂と曰(い)う。無魂の者は當に死すべし、人能(よ)く行くと雖(いえど)も、名付けて行尸(あんし)と曰う。
上部に脉有り、下部に脉無きは、其の人當に吐くべし、吐かざる者は死しす。
上部に脉無く、下部に脉有るは、困すると雖ども能く害をなすことなし。
然る所以の者は、譬(たと)えば人に尺有れば、樹の根あるが如し、枝葉(しよう)枯槁(ここう)すと雖も、根本將(まさ)に自ら生きんとす。
脉に根本有るは、人に元気あり、故に知らぬ死せざることを。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
十四難の解説
(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
十四難の解説をします。
「損至の脉」とは、どの様な事なのか、説明しなさい。
お答えします。
至の脉(数脉:速い脉)について説明します。
一呼吸に吐く時に脉が二拍動し、吸う時に脉が二拍動するを平脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉三拍動し、吸う時に脉が三拍動するを離経脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が四拍動し、吸う時に脉が四拍動するを奪精脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が五拍動し、吸う時に脉が五拍動するを死脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が六拍動し、吸う時に脉が六拍動するを命絶脉と言います。
これが至の脉(数脉)の説明です。
損脉(遅い脉)について説明します。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精脉」と言います。
三呼一動、三吸一動、即ち一呼吸半に一拍する遅い脉を「損の死脉」と言います。
四呼一動、四吸一動、即ち二呼吸半に一拍する遅い脉を「損の命絶脉」と言います。
これが損脉(遅い脉)の説明です。
至脉と言うものは下より上(あが)るもの、損脉は上より下(さ)がるものである。
損脉の病気の種類と症状を説明しなさい。
お答えします。
一損とは、皮膚と毛髪を損(そこ)ない、皮膚が痿縮して皺になって脱毛する。
二損と言うものは血脉を損ない、血脉と言う血を運ぶ蔵(くら)が虚少になるので、
五臓六腑を栄養することが出来なくなる。
三損と言うものは筋肉を損なう。食事をしても皮膚や筋肉に栄養が届かないので筋肉が痩せ細ってくる。
四損と言うものは筋(腱)を損なう。関節を維持している腱が緩んで自立歩行も出来ない。
五損と言うものは骨を損ない、骨が委縮して床に立つことも歩く事も出来なくなる。
ここまでは損脉(遅脉)の病気の順序に従い記述したが、
この順序の反対に進む病気は至脉(数脉)の病である。即ち下の腎から一損と行き、五損で肺に行く。
損脉で肺の一損から始まって五損に至り骨が委縮して床に起立出来なくなった者は死んでしまうと。
至脉(数脉)の病で腎の一損から始まって五損で肺に至り皮膚と毛髪を損(そこ)ない、
皮膚が痿縮して脱毛する者は死んでしまうと。
損の病気を治療する方法を説明しなさい。
お答えします。
肺経の病気の患者には、気を養う治療をする事。
心経の病気の患者には、血液の循環が悪いのだから血を養う治療をする事。
脾経の病気の患者には、飲食物に気を付け、そして暑さ寒さに心得た生活を指導する。
肝経の病気の患者には、筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
腎経の病気の患者には、陰精を補う治療をする事。
以上が五損を治療する法則である。
至の脉(速い脉)の説明。
一呼に二動、一吸に二動は平脉です。一呼に三動、一吸に三動は離経脉です。
一呼に四動、一吸に動は奪精脉です。一呼五に動、一吸五に動は死脉です。
一呼に六動、一吸に六動は命絶脉です。(一呼吸に十二動は命絶脉と言う事です。)
損脉(遅い脉)について説明。
「一呼一至、一吸一至あり。」これは一息二動ですから損脉の離経(りけい)の事です。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を損脉の奪精脉の事です。呼吸には再至があります。「再至」とは二動と言う事です。
この様なそれぞれの脉を顕すとき、どの様な症状になるかを分別して説明しなさい。
お答えします。
脉状を診るに一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する。
そして脉状は大きくもなく小さくもない、これを平脉と言います。
一呼吸で、一回吐く時に脉三拍動し、一回吸う時に脉が三拍動する、
この時より初めて病気の段階に入ったと。
脉に初めふれた時には非常に大きく感じ、沈めて行くと段々と小さくなる脉状は、
頭痛と目眩(めまい)がする。感冒ですね。
脉に初めふれた時には小さく、沈めて行くと段々と大きく感じの脉状は、みぞおちがつかえ、呼吸の気が短くなる。
一呼吸で、一回吐く時に脉四拍動し、一回吸う時に脉が四拍動する(一息に八動)、
これから病気が非常に強くなる。
奪精の一息八動で、かつ脉状が大にふとく踊って指に満ちて力のある脉の者は、陽邪が非常に盛んで心胸部が張り満ち煩わしく苦しむ病状をていする。
奪精の一息八動脉で、かつ脉状が細くて沈んでいる脉の者は、腹が痛む。
奪精の一息八動脉で、かつ滑(すべ)る様な滑脉の者は、熱に傷(やぶ)られている。
奪精の一息八動脉で、かつ脉状が濇(ショク)脉の者は、霧露に当てられたのだと。
一呼吸で、一回吐く時に脉五拍動し、一回吸う時に脉が五拍動する(一息十動の死脉)、
の場合は身体が段々衰弱してくると。
死脉の一息十動で、かつ脉状が沈細の患者は夜になると病状が重くなり、脉状が浮大の患者は昼間が非常に病状が悪化すると。
死脉の一息十動でも、脉状が大きくもなく小さくなければ非常に疲労困憊していても治る。
死脉の一息十動で、脉状が大きいか小さいかいずれかに偏れば、病気は治りにくい。
一呼吸で一回吐く時に脉六拍動し、一回吸う時に脉が六拍動する、
一息十二動と言う極度な数脉で「絶命」と名付けられた決定的な死脉です。
絶命脉の一息十二動で、脉状が沈細の患者は夜に死ぬ。脉状が浮大の患者は昼に死ぬと。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
今、現在よく仕事をしている人でも、一呼吸に二拍する遅い脉を打つ人は、近い内に病気になりますよと。
こうゆう人は気と血が不足しているからであると。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、
即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精」の事です。
この状態を名付けて無魂と言い、身体の精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。このような人が無意識に歩行したという本人は病を感じていない、これを名付けて行尸(あんし)と言い、そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
六部定位(ろくぶじょうい)の脉診に於いて、寸口・関上・尺中の脉位の内、寸口脉があって尺中の方に脉がない場合で、吐き気があれば生き、吐かない者は死ねと。
寸口の方に脉が無くとも、尺中の方に脉が有る場合は、病に苦しんでも治ります。
これらの患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
十四難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕十四難曰
〔訓読〕十四難に曰く。
〔解説〕十四難の解説をします。
〔原文〕脉有損至.何謂也.
〔訓読〕脉に損至ありとは、何の謂ぞや。
〔解説〕「損至の脉」とは、どの様な事なのか、説明しなさい。
〔解説補足〕十四の難では脉の「数」について書かれています。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕
至之脉.一呼再至曰平.三至曰離經.四至曰奪精.五至曰死.六至曰命絶.此至之脉也.
〔訓読〕
至の脉は、一呼に再至を平と曰い、三至を離経(りけい)と曰い、四至を奪精と曰い、五至を死と曰い、六至を命絶と曰う。此れ至の脉なり。
〔解説〕
至の脉(数脉:速い脉)について説明します。
一呼吸に吐く時に脉が二拍動し、吸う時に脉が二拍動するを平脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉三拍動し、吸う時に脉が三拍動するを離経脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が四拍動し、吸う時に脉が四拍動するを奪精脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が五拍動し、吸う時に脉が五拍動するを死脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が六拍動し、吸う時に脉が六拍動するを命絶脉と言います。
これが至の脉(数脉)の説明です。
〔解説補足〕「一呼に再至」と言うのは、息を吐くときと吸う時の意味で、吐く時に脉二動、吸う時に脉二動の意味です。
〔原文〕
何謂損.一呼一至曰離經.二呼一至曰奪精.三呼一至曰死.四呼一至曰命絶.此謂損之脉也.
〔訓読〕
何をか損と謂う、一呼一至を離経(りけい)と曰い、二呼(再呼)一至を奪精と曰い、三呼一至を死と曰い、四呼一至を命絶と曰う。此れ損脉の謂いなり。
〔解説〕
損脉(遅い脉)について説明します。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精脉」と言います。
三呼一動、三吸一動、即ち一呼吸半に一拍する遅い脉を「損の死脉」と言います。
四呼一動、四吸一動、即ち二呼吸半に一拍する遅い脉を「損の命絶脉」と言います。
これが損脉(遅い脉)の説明です。
〔原文〕至脉從下上.損脉從上下也.
〔訓読〕至脉は下より上(のぼ)り、損脉は上より下(くだ)るなり。
〔解説〕至脉と言うものは下より上(あが)るもの、損脉は上より下(さ)がるものである。
〔解説補足〕
「下より上(あが)る」とは、腎から肺に至るものです。この順序は腎・肝・脾・心・肺と行く。
「上より下(さ)がる」とは、肺から腎に至るものです。この順序は肺・心・脾・肝・腎と行く。
それから、形態的には、
「下より上る至脉」とは、骨・筋(すじ)・肌肉・血脉・皮膚と行く。
「上より下がる損脉」とは、皮膚から血脉に入って筋肉、筋(靭帯や神経)それから骨と下る。
〔原文〕損脉之爲病.奈何.
〔訓読〕損脉の病たること、いかん。
〔解説〕損脉の病気の種類と症状を説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕一損損於皮毛.皮聚而毛落.
〔訓読〕一損は皮毛を損す、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ。
〔解説〕一損とは、皮膚と毛髪を損(そこ)ない、皮膚が痿縮して皺になって脱毛する。
〔解説補足〕「皮聚って」とは、皮膚が痿縮して皺になるの意味です。
〔原文〕二損損於血脉.血脉虚少.不能榮於五藏六府也.
〔訓読〕二損は血脉を損す、血脉虚少にして、五臓六腑を榮すること能わず。
〔解説〕二損と言うものは血脉を損ない、血脉と言う血を運ぶ蔵(くら)が虚少になるので、
五臓六腑を栄養することが出来なくなる。
〔解説補足〕
二損は、臓腑を潤すことが出来ないから結果として肌が乾いて色を失って大便が欠っしてくる。
(肌があれ、化粧のノリが悪くなり、便秘する訳ですね。)
〔第十四難での言葉の意味〕「血脉虚少にして」とは血液の循環が悪くなる事です。
〔原文〕三損損於肌肉.肌肉消痩.飮食不爲肌膚.
〔訓読〕三損は肌肉を損す、肌肉消痩して、飲食も肌膚の為ならず。
〔解説〕三損と言うものは筋肉を損なう。食事をしても皮膚や筋肉に栄養が届かないので筋肉が痩せ細ってくる。
〔原文〕四損損於筋.筋緩不能自收持也.
〔訓読〕四損は筋を損す、筋緩んで自ら収持すること能わず。
〔解説〕四損と言うものは筋(腱)を損なう。関節を維持している腱が緩んで自立歩行も出来ない。
〔原文〕五損損於骨.骨痿不能起於牀.
〔訓読〕五損は骨を損す、骨痿(な)えて床に起こと能わず。
〔解説〕五損と言うものは骨を損ない、骨が委縮して床に立つことも歩く事も出来なくなる。
〔原文〕反此者至於收病也.
〔訓読〕此に反する者は至脉の病なり。
〔解説〕ここまでは損脉(遅脉)の病気の順序に従い記述したが、
この順序の反対に進む病気は至脉(数脉)の病である。即ち下の腎から一損と行き、五損で肺に行く。
し。
〔原文〕從上下者.骨痿不能起於牀者死.
〔訓読〕上より下る者は、骨痿て床に起つこと能わざる者は死す。
〔解説〕損脉(遅脉)で肺の一損から始まって五損に至り骨が委縮して床に起立出来なくなった者は死んでしまうと。
〔原文〕從下上者.皮聚而毛落者死.
〔訓読〕下より上る者は、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ者は死す。
〔解説〕至脉(数脉)の病で腎の一損から始まって五損で肺に至り皮膚と毛髪を損(そこ)ない、
皮膚が痿縮して脱毛する者は死んでしまうと。
〔原文〕治損之法奈何.
〔訓読〕損を治するの法いかに。
〔解説〕損の病気を治療する方法を説明しなさい。
〔解説補足〕「損の病気」とは、損脉(遅脉)と至脉(数脉)においての五臓の病気を指します。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕損其肺者.益其氣.
〔訓読〕其の肺を損する者は、其の気を益す。
〔解説〕肺経の病気の患者には、気を養う治療をする事。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
これは証と病が一致した時に「損病」の症状が出て来る。
脱毛症の患者は肺の病としてその気を養う。
血を養うのではなくて、気を中心に治療をする事。
- 肺虚証の脱毛症は治る。肝虚証の脱毛症は治らないか、治りにくい。
- 固有体質で肝虚証・腎虚証体質の人は頭が禿げて来ます。若禿ね。
脾虚・肺虚証の体質者は白髪になる。
〔解説補足〕肺を傷ることは、損脉(遅脉)では第一損、至脉(数脉)では第五損に該当する。
〔原文〕損其心者.調其榮衞.
〔訓読〕其の心を損する者は、其の榮衞を調(ととの)える。
〔解説〕心経の病気の患者には、血液の循環が悪いのだから血を養う治療をする事。
〔原文〕損其脾者.調其飮食.適其寒温.
〔訓読〕其の脾を損する者は、其の飲食を調え、其の寒温に適(かな)う。
〔解説〕脾経の病気の患者には、飲食物に気を付け、そして暑さ寒さに心得た生活を指導する。
〔原文〕損其肝者.緩其中.
〔訓読〕其の肝を損する者は、其の中を緩(ゆる)くす。
〔解説〕肝経の病気の患者には、筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕筋に来る病と言うものは、初めは筋が突っ張って後に緩んでくる。
だから筋を筋を緩くするための治療をする。筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
〔原文〕損其腎者.益其精.
〔訓読〕其の腎を損する者は、其の精を益す。
〔解説〕腎経の病気の患者には、陰精を補う治療をする事。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
ここでは陽精ではなく陰精を補う事。精気と言うのは腎が主る。 筋は気に属する。
陰の血は腎・陰の気は肝、陽の血は心・陽の気は肺、その中の飲食寒温を整える事は真ん中に位置している事になります。
〔原文〕此治損之法也.
〔訓読〕此れ損を治するの法なり。
〔解説〕以上が五損を治療する法則である。
〔解説補足〕注意:ここでに損は損脉の意味ではなくて五臓の損傷を指しています。
〔原文〕脉.有一呼再至.一吸再至.有一呼三至.一吸三至.有一呼四至.一吸四至.有一呼五至.一吸五至.有一呼六至.一吸六至.有一呼一至.一吸一至.有再呼一至.再吸一至.有呼吸再至.
〔訓読〕脉に、一呼再至、一吸再至あり。一呼三至、一吸三至あり。一呼四至、一吸四至あり、
一呼五至、一吸五至あり。一呼六至、一吸六至あり。一呼一至、一吸一至あり。再呼一至、再吸一至あり。呼吸再至あり。
〔解説〕
至の脉(速い脉)の説明。
一呼に二動、一吸に二動は平脉です。一呼に三動、一吸に三動は離経脉です。
一呼に四動、一吸に動は奪精脉です。一呼五に動、一吸五に動は死脉です。
一呼に六動、一吸に六動は命絶脉です。(一呼吸に十二動は命絶脉と言う事です。)
損脉(遅い脉)について説明。
「一呼一至、一吸一至あり。」これは一息二動ですから損脉の離経(りけい)の事です。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を損脉の奪精脉の事です。呼吸には再至があります。「再至」とは二動と言う事です。
〔原文〕脉來如此.何以別知其病也.
〔訓読〕脉来ることこの如き、何を以ってか其の病を別ち知らん。
〔解説〕この様なそれぞれの脉を顕すとき、どの様な症状になるかを分別して説明しなさい。
〔井上先生の解説補足〕この様な脉を顕す病の深浅・邪気の寒熱・生死等をどの様に分けているのか説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕脉來一呼再至.一吸再至.不大不小.曰平.
〔訓読〕脉来ること一呼に再至、一吸に再至、大ならず小ならず、平と曰う。
〔解説〕
脉状を診るに一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する。
そして脉状は大きくもなく小さくもない、これを平脉と言います。
〔原文〕一呼三至.一吸三至.爲適得病.
〔訓読〕一呼に三至、一吸に三至、適(はじ)めて病を得るとなす。
〔解説〕
一呼吸で、一回吐く時に脉三拍動し、一回吸う時に脉が三拍動する、
この時より初めて病気の段階に入ったと。
〔解説補足〕
「一呼に三至、一吸に三至、」は一息に六動する事です。そしてこれを「離経脉」と言います。
〔原文〕前大後小.即頭痛目眩.
〔訓読〕前(まえ)大、後(うしろ)少なるは、即ち頭痛目眩。
〔解説〕
脉に初めふれた時には非常に大きく感じ、沈めて行くと段々と小さくなる脉状は、
頭痛目眩がする。感冒ですね。
〔解説補足〕
〔井上先生の解説補足〕
「前」と言うのは「初めて」脉に指をあてた時にと言う意味です。
「後」と言うのはそこから指を沈めた時にと言う意味です。即ち浮沈の事です。
初め脉に当てた時には非常に大きく感じると。沈めて行くと段々と小さくなると言う事です。
「前大後少」になる脉状は頭痛目眩がする。感冒ですね。皮膚に邪が当てられた時にはこうゆう症状が起きると。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
ところが〔実際の臨床では〕頭痛する人は目まいをしないんです。
頭痛と目眩(めまい)は一緒にくると思うと間違いです。
目まいをする人は頭痛はしないと言う事です。この場合は・・・。
人間には、頭痛を知っている人と知らない人があるのです。
そして、頭痛を知らない人は肩こりと胸やけも知らない、(起こらないですね。)
ところが、そんな人でも熱が出ると目まいがするんです。
〔原文〕前小後大.即胸滿短氣.
〔訓読〕前小後大は。即ち胸滿短氣。
〔解説〕
脉に初めふれた時には小さく、沈めて行くと段々と大きく感じの脉状は、みぞおちがつかえ、呼吸の気が短くなる。
〔井上先生の解説補足〕みぞおち・横隔膜が硬くなって呼吸がみじかくなる。ハッハッハッとね。
〔原文〕一呼四至.一吸四至.病欲甚.
〔訓読〕一呼に四至、一吸に四至は、病甚しからんと浴す。
〔解説〕一呼吸で、一回吐く時に脉四拍動し、一回吸う時に脉が四拍動する(一息に八動)、
これから病気が非常に強くなる。
〔解説補足〕「一呼に四至、一吸に四至」は、一息に八動すること。これを「奪精脉」と言います。
〔原文〕脉洪大者.苦煩滿.
〔訓読〕脉洪大なる者は、煩滿を苦しむ。
〔解説〕奪精の一息八動で、かつ脉状が大にふとく踊って指に満ちて力のある脉の者は、陽邪が非常に盛んで心胸部が張り満ち煩わしく苦しむ病状をていする。
〔解説補足〕「奪精の一息八動、脉洪大、煩滿を苦しむ者」は、陽邪が内の(経絡)まで入って来て、傷寒・傷風と言う様な病気になっている。
〔原文〕沈細者.腹中痛.
〔訓読〕脉沈細なる者は、腹中痛む。
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ脉状が細くて沈んでいる脉の者は、腹が痛む。
〔原文〕滑者傷熱.
〔訓読〕脉滑(カツ)なる者は、熱に傷れ、
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ滑(すべ)る様な滑脉の者は、熱に傷(やぶ)られている。
〔解説補足〕血脈に熱が入った状態。
〔原文〕濇者中霧露.
〔訓読〕脉濇(ショク)なる者は、霧露(むろ)に中(あて)たるる。
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ脉状が濇(ショク)脉の者は、霧露に当てられたのだと。
〔原文〕一呼五至.一吸五至.其人當困.
〔訓読〕一呼に五至、一吸に五至、其の人当に困すべし、
〔解説〕一呼吸で、一回吐く時に脉五拍動し、一回吸う時に脉が五拍動する(一息十動の死脉)、
の場合は身体が段々衰弱してくると。
〔解説補足〕「一呼に五至、一吸に五至」は、一息に十動すること。これを「死脉」と言います。
〔原文〕沈細夜加.浮大晝加.
〔訓読〕沈細なる者は夜加わり、浮大なる者は昼加わる、
〔解説〕死脉の一息十動で、かつ脉状が沈細の患者は夜になると病状が重くなり、脉状が浮大の患者は昼間が非常に病状が悪化すると。
〔原文〕不大不小.雖困可治.
〔訓読〕大ならず小ならずは、困すと雖(いえど)も治すべし、
〔解説〕死脉の一息十動でも、脉状が大きくもなく小さくなければ非常に疲労困憊していても治る。
〔原文〕其有大小者.爲難治.
〔訓読〕其の大小ある者は、治し難(がた)し。
〔解説〕死脉の一息十動で、脉状が大きいか小さいかいずれかに偏れば、病気は治りにくい。
〔原文〕一呼六至.一吸六至.爲死脉也.
〔訓読〕一呼に六至、一吸に六至は、死脉となすなり。
〔解説〕一呼吸で一回吐く時に脉六拍動し、一回吸う時に脉が六拍動する、
一息十二動と言う極度な数脉で「絶命」と名付けられた決定的な死脉です。
〔原文〕沈細夜死.浮大晝死.
〔訓読〕沈細なる者は夜死し、浮大なる者は昼死す。
〔解説〕絶命脉の一息十二動で、脉状が沈細の患者は夜に死ぬ。脉状が浮大の患者は昼に死ぬと。
〔原文〕一呼一至.一吸一至.名曰損.
〔訓読〕一呼一至.一吸一至.名曰損.
〔解説〕一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
〔原文〕人雖能行.猶當著牀.
〔訓読〕人能(よ)く行くと雖(いえど)も、猶(なお)當(まさ)に床に着くべし、
〔解説〕今、現在よく仕事をしている人でも、一呼吸に二拍する遅い脉を打つ人は、近い内に病気になりますよと。
〔原文〕所以然者.血氣皆不足故也.
〔訓読〕然る所以の者は、血氣皆不足するが故なり。
〔解説〕こうゆう人は気と血が不足しているからであると。
〔原文〕再呼一至.再吸一至.名曰無魂.無魂者當死也.人雖能行.名曰行尸.
〔訓読〕再呼に一至、再吸に一至、名付けて無魂と曰(い)う。無魂の者は當に死すべし、人能(よ)く行くと雖(いえど)も、名付けて行尸(あんし)と曰う。
〔解説〕「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、
即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精」の事です。
この状態を名付けて無魂と言い、身体の精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。このような人が無意識に歩行したという本人は病を感じていない、これを名付けて行尸(あんし)と言い、そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
〔原文〕上部有脉.下部無脉.其人當吐.不吐者死.
〔訓読〕上部に脉有り、下部に脉無きは、其の人當に吐くべし、吐かざる者は死しす。
〔解説〕六部定位(ろくぶじょうい)の脉診に於いて、寸口・関上・尺中の脉位の内、寸口脉があって尺中の方に脉がない場合で、吐き気があれば生き、吐かない者は死ねと。
〔原文〕上部無脉.下部有脉.雖困無能爲害也.
〔訓読〕上部に脉無く、下部に脉有るは、困すると雖ども能く害をなすことなし。
〔解説〕寸口の方に脉が無くとも、尺中の方に脉が有る場合は、病に苦しんでも治ります。
〔原文〕所以然者.譬如人之有尺.樹之有根.枝葉雖枯槁.根本將自生.
〔訓読〕然る所以の者は、譬(たと)えば人に尺有れば、樹の根あるが如し、枝葉(しよう)枯槁(ここう)すと雖も、根本將(まさ)に自ら生きんとす。
〔解説〕これらの患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
〔原文〕脉有根本.人有元氣.故知不死.
〔訓読〕脉に根本有るは、人に元気あり、故に知らぬ死せざることを。
〔解説〕脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
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以上、ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十四難 を終わります。
2014.4.23.
詳しくはこちらのHPの下段の
初学者用経絡鍼灸教科書バナーの
難経コーナーからご覧ください。
http://www.yukkuridou.com/
難経 第十四難
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十四難 ank014
※ 十四難のポイント其の一は、
十四難は一回の呼吸と脈拍回数の関係に於いての病の診方を述べています。
※ 十四難のポイント其の二は、
健康で正常な脉状は、一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する時です。
※ 十四難のポイント其の三、
もうすぐ病気になる人は、一呼吸に二拍動する遅い脉を打つ人です。
つまり、一回吐く時に脉が一拍動し、一回吸う時に脉が一拍動する状態ですね。
※ 十四難のポイント其の四は、
元気なように見えていて、バタッと倒れて死んでしまう人の脉は、
一呼吸に一拍する遅い脉を打っている人です。そして、この状態を「無魂」と言います。
身体の中に精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。
このような人が無意識に歩行しています。本人は病を感じていません。
この状態を古典では「行尸(あんし)」と言います。
そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
※ 十四難のポイント其の五は、
もう少し人生を楽しみたい方は「腎気」を養う事です。
其の為には、左尺中の脉、即ち腎の脉が消えないように、経絡鍼灸をお受けください。
臨床で、患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、
たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
難経 第十四難
難経 第十四難 原文
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
十四難曰.
脉有損至.何謂也.
然.
至之脉.一呼再至曰平.三至曰離經.四至曰奪精.五至曰死.六至曰命絶.此至之脉也.
何謂損.一呼一至曰離經.二呼一至曰奪精.三呼一至曰死.四呼一至曰命絶.此謂損之脉也.
至脉從下上.損脉從上下也.
損脉之爲病.奈何.
然.
一損損於皮毛.皮聚而毛落.
二損損於血脉.血脉虚少.不能榮於五藏六府也.
三損損於肌肉.肌肉消痩.飮食不爲肌膚.
四損損於筋.筋緩不能自收持也.
五損損於骨.骨痿不能起於牀.
反此者至於收病也.
從上下者.骨痿不能起於牀者死.
從下上者.皮聚而毛落者死.
治損之法奈何.
然.
損其肺者.益其氣.
損其心者.調其榮衞.
損其脾者.調其飮食.適其寒温.
損其肝者.緩其中.
損其腎者.益其精.
此治損之法也.
脉
有一呼再至.一吸再至.
有一呼三至.一吸三至.
有一呼四至.一吸四至.
有一呼五至.一吸五至.
有一呼六至.一吸六至.
有一呼一至.一吸一至.
有再呼一至.再吸一至.
有呼吸再至.
脉來如此.何以別知其病也.
然.
脉來一呼再至.一吸再至.不大不小.曰平.
一呼三至.一吸三至.爲適得病.前大後小.即頭痛目眩.前小後大.即胸滿短氣.
一呼四至.一吸四至.病欲甚.脉洪大者.苦煩滿.沈細者.腹中痛.滑者傷熱.濇者中霧露.
一呼五至.一吸五至.其人當困.沈細夜加.浮大晝加.不大不小.雖困可治.其有大小者.爲難治.
一呼六至.一吸六至.爲死脉也.沈細夜死.浮大晝死.
一呼一至.一吸一至.名曰損.人雖能行.猶當著牀.所以然者.血氣皆不足故也.
再呼一至.再吸一至.名曰無魂.無魂者當死也.人雖能行.名曰行尸.
上部有脉.下部無脉.其人當吐.不吐者死.
上部無脉.下部有脉.雖困無能爲害也.
所以然者.譬如人之有尺.樹之有根.枝葉雖枯槁.根本將自生.
脉有根本.人有元氣.故知不死.
十四難の訓読
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
十四難に曰く。
脉に損至ありとは、何の謂ぞや。
然(しか)るなり。
至の脉は、一呼に再至を平と曰い、三至を離経(りけい)と曰い、四至を奪精と曰い、
五至を死と曰い、六至を命絶と曰う。此れ至の脉なり。
何をか損と謂う、一呼一至を離経(りけい)と曰い、二呼(再呼)一至を奪精と曰い、
三呼一至を死と曰い、四呼一至を命絶と曰う。此れ損脉の謂いなり。
至脉は下より上(のぼ)り、損脉は上より下(くだ)るなり。
損脉の病たること、いかん。
然(しか)るなり。
一損は皮毛を損す、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ。
二損は血脉を損す、血脉虚少にして、五臓六腑を榮すること能わず。
三損は肌肉を損す、肌肉消痩して、飲食も肌膚の為ならず。
四損は筋を損す、筋緩んで自ら収持すること能わず。
五損は骨を損す、骨痿(な)えて床に起こと能わず。
此に反する者は至脉の病なり。
上より下る者は、骨痿て床に起つこと能わざる者は死す。
下より上る者は、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ者は死す。
損を治するの法いかに。
然(しか)るなり。
其の肺を損する者は、其の気を益す。
其の心を損する者は、其の榮衞を調(ととの)える。
其の脾を損する者は、其の飲食を調え、其の寒温に適(かな)う。
其の肝を損する者は、其の中を緩(ゆる)くす。
其の腎を損する者は、其の精を益す。
此れ損を治するの法なり。
脉に、一呼再至、一吸再至あり。一呼三至、一吸三至あり。一呼四至、一吸四至あり、
一呼五至、一吸五至あり。一呼六至、一吸六至あり。一呼一至、一吸一至あり。
再呼一至、再吸一至あり。呼吸再至あり。
脉来ることこの如き、何を以ってか其の病を別ち知らん。
然(しか)るなり。
脉来ること一呼に再至、一吸に再至、大ならず小ならず、平と曰う。
一呼に三至、一吸に三至、適(はじ)めて病を得るとなす。
前(まえ)大、後(うしろ)少なるは、即ち頭痛目眩。前小後大は。即ち胸滿短氣。
一呼に四至、一吸に四至は、病甚しからんと浴す。
脉洪大なる者は、煩滿を苦しむ。脉沈細なる者は、腹中痛む。
脉滑(カツ)なる者は、熱に傷れ、脉濇(ショク)なる者は、霧露(むろ)に中(あて)たるる。
一呼に五至、一吸に五至、其の人当に困すべし、
沈細なる者は夜加わり、浮大なる者は昼加わる、大ならず小ならずは、困すと雖(いえど)も治すべし、
其の大小ある者は、治し難(がた)し。
一呼に六至、一吸に六至は、死脉となすなり。沈細なる者は夜死し、浮大なる者は昼死す。
一呼一至.一吸一至.名曰損.
人能(よ)く行くと雖(いえど)も、猶(なお)當(まさ)に床に着くべし、
然る所以の者は、血氣皆不足するが故なり。
再呼に一至、再吸に一至、名付けて無魂と曰(い)う。無魂の者は當に死すべし、人能(よ)く行くと雖(いえど)も、名付けて行尸(あんし)と曰う。
上部に脉有り、下部に脉無きは、其の人當に吐くべし、吐かざる者は死しす。
上部に脉無く、下部に脉有るは、困すると雖ども能く害をなすことなし。
然る所以の者は、譬(たと)えば人に尺有れば、樹の根あるが如し、枝葉(しよう)枯槁(ここう)すと雖も、根本將(まさ)に自ら生きんとす。
脉に根本有るは、人に元気あり、故に知らぬ死せざることを。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
十四難の解説
(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
十四難の解説をします。
「損至の脉」とは、どの様な事なのか、説明しなさい。
お答えします。
至の脉(数脉:速い脉)について説明します。
一呼吸に吐く時に脉が二拍動し、吸う時に脉が二拍動するを平脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉三拍動し、吸う時に脉が三拍動するを離経脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が四拍動し、吸う時に脉が四拍動するを奪精脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が五拍動し、吸う時に脉が五拍動するを死脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が六拍動し、吸う時に脉が六拍動するを命絶脉と言います。
これが至の脉(数脉)の説明です。
損脉(遅い脉)について説明します。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精脉」と言います。
三呼一動、三吸一動、即ち一呼吸半に一拍する遅い脉を「損の死脉」と言います。
四呼一動、四吸一動、即ち二呼吸半に一拍する遅い脉を「損の命絶脉」と言います。
これが損脉(遅い脉)の説明です。
至脉と言うものは下より上(あが)るもの、損脉は上より下(さ)がるものである。
損脉の病気の種類と症状を説明しなさい。
お答えします。
一損とは、皮膚と毛髪を損(そこ)ない、皮膚が痿縮して皺になって脱毛する。
二損と言うものは血脉を損ない、血脉と言う血を運ぶ蔵(くら)が虚少になるので、
五臓六腑を栄養することが出来なくなる。
三損と言うものは筋肉を損なう。食事をしても皮膚や筋肉に栄養が届かないので筋肉が痩せ細ってくる。
四損と言うものは筋(腱)を損なう。関節を維持している腱が緩んで自立歩行も出来ない。
五損と言うものは骨を損ない、骨が委縮して床に立つことも歩く事も出来なくなる。
ここまでは損脉(遅脉)の病気の順序に従い記述したが、
この順序の反対に進む病気は至脉(数脉)の病である。即ち下の腎から一損と行き、五損で肺に行く。
損脉で肺の一損から始まって五損に至り骨が委縮して床に起立出来なくなった者は死んでしまうと。
至脉(数脉)の病で腎の一損から始まって五損で肺に至り皮膚と毛髪を損(そこ)ない、
皮膚が痿縮して脱毛する者は死んでしまうと。
損の病気を治療する方法を説明しなさい。
お答えします。
肺経の病気の患者には、気を養う治療をする事。
心経の病気の患者には、血液の循環が悪いのだから血を養う治療をする事。
脾経の病気の患者には、飲食物に気を付け、そして暑さ寒さに心得た生活を指導する。
肝経の病気の患者には、筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
腎経の病気の患者には、陰精を補う治療をする事。
以上が五損を治療する法則である。
至の脉(速い脉)の説明。
一呼に二動、一吸に二動は平脉です。一呼に三動、一吸に三動は離経脉です。
一呼に四動、一吸に動は奪精脉です。一呼五に動、一吸五に動は死脉です。
一呼に六動、一吸に六動は命絶脉です。(一呼吸に十二動は命絶脉と言う事です。)
損脉(遅い脉)について説明。
「一呼一至、一吸一至あり。」これは一息二動ですから損脉の離経(りけい)の事です。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を損脉の奪精脉の事です。呼吸には再至があります。「再至」とは二動と言う事です。
この様なそれぞれの脉を顕すとき、どの様な症状になるかを分別して説明しなさい。
お答えします。
脉状を診るに一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する。
そして脉状は大きくもなく小さくもない、これを平脉と言います。
一呼吸で、一回吐く時に脉三拍動し、一回吸う時に脉が三拍動する、
この時より初めて病気の段階に入ったと。
脉に初めふれた時には非常に大きく感じ、沈めて行くと段々と小さくなる脉状は、
頭痛と目眩(めまい)がする。感冒ですね。
脉に初めふれた時には小さく、沈めて行くと段々と大きく感じの脉状は、みぞおちがつかえ、呼吸の気が短くなる。
一呼吸で、一回吐く時に脉四拍動し、一回吸う時に脉が四拍動する(一息に八動)、
これから病気が非常に強くなる。
奪精の一息八動で、かつ脉状が大にふとく踊って指に満ちて力のある脉の者は、陽邪が非常に盛んで心胸部が張り満ち煩わしく苦しむ病状をていする。
奪精の一息八動脉で、かつ脉状が細くて沈んでいる脉の者は、腹が痛む。
奪精の一息八動脉で、かつ滑(すべ)る様な滑脉の者は、熱に傷(やぶ)られている。
奪精の一息八動脉で、かつ脉状が濇(ショク)脉の者は、霧露に当てられたのだと。
一呼吸で、一回吐く時に脉五拍動し、一回吸う時に脉が五拍動する(一息十動の死脉)、
の場合は身体が段々衰弱してくると。
死脉の一息十動で、かつ脉状が沈細の患者は夜になると病状が重くなり、脉状が浮大の患者は昼間が非常に病状が悪化すると。
死脉の一息十動でも、脉状が大きくもなく小さくなければ非常に疲労困憊していても治る。
死脉の一息十動で、脉状が大きいか小さいかいずれかに偏れば、病気は治りにくい。
一呼吸で一回吐く時に脉六拍動し、一回吸う時に脉が六拍動する、
一息十二動と言う極度な数脉で「絶命」と名付けられた決定的な死脉です。
絶命脉の一息十二動で、脉状が沈細の患者は夜に死ぬ。脉状が浮大の患者は昼に死ぬと。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
今、現在よく仕事をしている人でも、一呼吸に二拍する遅い脉を打つ人は、近い内に病気になりますよと。
こうゆう人は気と血が不足しているからであると。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、
即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精」の事です。
この状態を名付けて無魂と言い、身体の精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。このような人が無意識に歩行したという本人は病を感じていない、これを名付けて行尸(あんし)と言い、そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
六部定位(ろくぶじょうい)の脉診に於いて、寸口・関上・尺中の脉位の内、寸口脉があって尺中の方に脉がない場合で、吐き気があれば生き、吐かない者は死ねと。
寸口の方に脉が無くとも、尺中の方に脉が有る場合は、病に苦しんでも治ります。
これらの患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
十四難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕十四難曰
〔訓読〕十四難に曰く。
〔解説〕十四難の解説をします。
〔原文〕脉有損至.何謂也.
〔訓読〕脉に損至ありとは、何の謂ぞや。
〔解説〕「損至の脉」とは、どの様な事なのか、説明しなさい。
〔解説補足〕十四の難では脉の「数」について書かれています。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕
至之脉.一呼再至曰平.三至曰離經.四至曰奪精.五至曰死.六至曰命絶.此至之脉也.
〔訓読〕
至の脉は、一呼に再至を平と曰い、三至を離経(りけい)と曰い、四至を奪精と曰い、五至を死と曰い、六至を命絶と曰う。此れ至の脉なり。
〔解説〕
至の脉(数脉:速い脉)について説明します。
一呼吸に吐く時に脉が二拍動し、吸う時に脉が二拍動するを平脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉三拍動し、吸う時に脉が三拍動するを離経脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が四拍動し、吸う時に脉が四拍動するを奪精脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が五拍動し、吸う時に脉が五拍動するを死脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が六拍動し、吸う時に脉が六拍動するを命絶脉と言います。
これが至の脉(数脉)の説明です。
〔解説補足〕「一呼に再至」と言うのは、息を吐くときと吸う時の意味で、吐く時に脉二動、吸う時に脉二動の意味です。
〔原文〕
何謂損.一呼一至曰離經.二呼一至曰奪精.三呼一至曰死.四呼一至曰命絶.此謂損之脉也.
〔訓読〕
何をか損と謂う、一呼一至を離経(りけい)と曰い、二呼(再呼)一至を奪精と曰い、三呼一至を死と曰い、四呼一至を命絶と曰う。此れ損脉の謂いなり。
〔解説〕
損脉(遅い脉)について説明します。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精脉」と言います。
三呼一動、三吸一動、即ち一呼吸半に一拍する遅い脉を「損の死脉」と言います。
四呼一動、四吸一動、即ち二呼吸半に一拍する遅い脉を「損の命絶脉」と言います。
これが損脉(遅い脉)の説明です。
〔原文〕至脉從下上.損脉從上下也.
〔訓読〕至脉は下より上(のぼ)り、損脉は上より下(くだ)るなり。
〔解説〕至脉と言うものは下より上(あが)るもの、損脉は上より下(さ)がるものである。
〔解説補足〕
「下より上(あが)る」とは、腎から肺に至るものです。この順序は腎・肝・脾・心・肺と行く。
「上より下(さ)がる」とは、肺から腎に至るものです。この順序は肺・心・脾・肝・腎と行く。
それから、形態的には、
「下より上る至脉」とは、骨・筋(すじ)・肌肉・血脉・皮膚と行く。
「上より下がる損脉」とは、皮膚から血脉に入って筋肉、筋(靭帯や神経)それから骨と下る。
〔原文〕損脉之爲病.奈何.
〔訓読〕損脉の病たること、いかん。
〔解説〕損脉の病気の種類と症状を説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕一損損於皮毛.皮聚而毛落.
〔訓読〕一損は皮毛を損す、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ。
〔解説〕一損とは、皮膚と毛髪を損(そこ)ない、皮膚が痿縮して皺になって脱毛する。
〔解説補足〕「皮聚って」とは、皮膚が痿縮して皺になるの意味です。
〔原文〕二損損於血脉.血脉虚少.不能榮於五藏六府也.
〔訓読〕二損は血脉を損す、血脉虚少にして、五臓六腑を榮すること能わず。
〔解説〕二損と言うものは血脉を損ない、血脉と言う血を運ぶ蔵(くら)が虚少になるので、
五臓六腑を栄養することが出来なくなる。
〔解説補足〕
二損は、臓腑を潤すことが出来ないから結果として肌が乾いて色を失って大便が欠っしてくる。
(肌があれ、化粧のノリが悪くなり、便秘する訳ですね。)
〔第十四難での言葉の意味〕「血脉虚少にして」とは血液の循環が悪くなる事です。
〔原文〕三損損於肌肉.肌肉消痩.飮食不爲肌膚.
〔訓読〕三損は肌肉を損す、肌肉消痩して、飲食も肌膚の為ならず。
〔解説〕三損と言うものは筋肉を損なう。食事をしても皮膚や筋肉に栄養が届かないので筋肉が痩せ細ってくる。
〔原文〕四損損於筋.筋緩不能自收持也.
〔訓読〕四損は筋を損す、筋緩んで自ら収持すること能わず。
〔解説〕四損と言うものは筋(腱)を損なう。関節を維持している腱が緩んで自立歩行も出来ない。
〔原文〕五損損於骨.骨痿不能起於牀.
〔訓読〕五損は骨を損す、骨痿(な)えて床に起こと能わず。
〔解説〕五損と言うものは骨を損ない、骨が委縮して床に立つことも歩く事も出来なくなる。
〔原文〕反此者至於收病也.
〔訓読〕此に反する者は至脉の病なり。
〔解説〕ここまでは損脉(遅脉)の病気の順序に従い記述したが、
この順序の反対に進む病気は至脉(数脉)の病である。即ち下の腎から一損と行き、五損で肺に行く。
し。
〔原文〕從上下者.骨痿不能起於牀者死.
〔訓読〕上より下る者は、骨痿て床に起つこと能わざる者は死す。
〔解説〕損脉(遅脉)で肺の一損から始まって五損に至り骨が委縮して床に起立出来なくなった者は死んでしまうと。
〔原文〕從下上者.皮聚而毛落者死.
〔訓読〕下より上る者は、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ者は死す。
〔解説〕至脉(数脉)の病で腎の一損から始まって五損で肺に至り皮膚と毛髪を損(そこ)ない、
皮膚が痿縮して脱毛する者は死んでしまうと。
〔原文〕治損之法奈何.
〔訓読〕損を治するの法いかに。
〔解説〕損の病気を治療する方法を説明しなさい。
〔解説補足〕「損の病気」とは、損脉(遅脉)と至脉(数脉)においての五臓の病気を指します。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕損其肺者.益其氣.
〔訓読〕其の肺を損する者は、其の気を益す。
〔解説〕肺経の病気の患者には、気を養う治療をする事。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
これは証と病が一致した時に「損病」の症状が出て来る。
脱毛症の患者は肺の病としてその気を養う。
血を養うのではなくて、気を中心に治療をする事。
- 肺虚証の脱毛症は治る。肝虚証の脱毛症は治らないか、治りにくい。
- 固有体質で肝虚証・腎虚証体質の人は頭が禿げて来ます。若禿ね。
脾虚・肺虚証の体質者は白髪になる。
〔解説補足〕肺を傷ることは、損脉(遅脉)では第一損、至脉(数脉)では第五損に該当する。
〔原文〕損其心者.調其榮衞.
〔訓読〕其の心を損する者は、其の榮衞を調(ととの)える。
〔解説〕心経の病気の患者には、血液の循環が悪いのだから血を養う治療をする事。
〔原文〕損其脾者.調其飮食.適其寒温.
〔訓読〕其の脾を損する者は、其の飲食を調え、其の寒温に適(かな)う。
〔解説〕脾経の病気の患者には、飲食物に気を付け、そして暑さ寒さに心得た生活を指導する。
〔原文〕損其肝者.緩其中.
〔訓読〕其の肝を損する者は、其の中を緩(ゆる)くす。
〔解説〕肝経の病気の患者には、筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕筋に来る病と言うものは、初めは筋が突っ張って後に緩んでくる。
だから筋を筋を緩くするための治療をする。筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
〔原文〕損其腎者.益其精.
〔訓読〕其の腎を損する者は、其の精を益す。
〔解説〕腎経の病気の患者には、陰精を補う治療をする事。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
ここでは陽精ではなく陰精を補う事。精気と言うのは腎が主る。 筋は気に属する。
陰の血は腎・陰の気は肝、陽の血は心・陽の気は肺、その中の飲食寒温を整える事は真ん中に位置している事になります。
〔原文〕此治損之法也.
〔訓読〕此れ損を治するの法なり。
〔解説〕以上が五損を治療する法則である。
〔解説補足〕注意:ここでに損は損脉の意味ではなくて五臓の損傷を指しています。
〔原文〕脉.有一呼再至.一吸再至.有一呼三至.一吸三至.有一呼四至.一吸四至.有一呼五至.一吸五至.有一呼六至.一吸六至.有一呼一至.一吸一至.有再呼一至.再吸一至.有呼吸再至.
〔訓読〕脉に、一呼再至、一吸再至あり。一呼三至、一吸三至あり。一呼四至、一吸四至あり、
一呼五至、一吸五至あり。一呼六至、一吸六至あり。一呼一至、一吸一至あり。再呼一至、再吸一至あり。呼吸再至あり。
〔解説〕
至の脉(速い脉)の説明。
一呼に二動、一吸に二動は平脉です。一呼に三動、一吸に三動は離経脉です。
一呼に四動、一吸に動は奪精脉です。一呼五に動、一吸五に動は死脉です。
一呼に六動、一吸に六動は命絶脉です。(一呼吸に十二動は命絶脉と言う事です。)
損脉(遅い脉)について説明。
「一呼一至、一吸一至あり。」これは一息二動ですから損脉の離経(りけい)の事です。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を損脉の奪精脉の事です。呼吸には再至があります。「再至」とは二動と言う事です。
〔原文〕脉來如此.何以別知其病也.
〔訓読〕脉来ることこの如き、何を以ってか其の病を別ち知らん。
〔解説〕この様なそれぞれの脉を顕すとき、どの様な症状になるかを分別して説明しなさい。
〔井上先生の解説補足〕この様な脉を顕す病の深浅・邪気の寒熱・生死等をどの様に分けているのか説明しなさい。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕脉來一呼再至.一吸再至.不大不小.曰平.
〔訓読〕脉来ること一呼に再至、一吸に再至、大ならず小ならず、平と曰う。
〔解説〕
脉状を診るに一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する。
そして脉状は大きくもなく小さくもない、これを平脉と言います。
〔原文〕一呼三至.一吸三至.爲適得病.
〔訓読〕一呼に三至、一吸に三至、適(はじ)めて病を得るとなす。
〔解説〕
一呼吸で、一回吐く時に脉三拍動し、一回吸う時に脉が三拍動する、
この時より初めて病気の段階に入ったと。
〔解説補足〕
「一呼に三至、一吸に三至、」は一息に六動する事です。そしてこれを「離経脉」と言います。
〔原文〕前大後小.即頭痛目眩.
〔訓読〕前(まえ)大、後(うしろ)少なるは、即ち頭痛目眩。
〔解説〕
脉に初めふれた時には非常に大きく感じ、沈めて行くと段々と小さくなる脉状は、
頭痛目眩がする。感冒ですね。
〔解説補足〕
〔井上先生の解説補足〕
「前」と言うのは「初めて」脉に指をあてた時にと言う意味です。
「後」と言うのはそこから指を沈めた時にと言う意味です。即ち浮沈の事です。
初め脉に当てた時には非常に大きく感じると。沈めて行くと段々と小さくなると言う事です。
「前大後少」になる脉状は頭痛目眩がする。感冒ですね。皮膚に邪が当てられた時にはこうゆう症状が起きると。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
ところが〔実際の臨床では〕頭痛する人は目まいをしないんです。
頭痛と目眩(めまい)は一緒にくると思うと間違いです。
目まいをする人は頭痛はしないと言う事です。この場合は・・・。
人間には、頭痛を知っている人と知らない人があるのです。
そして、頭痛を知らない人は肩こりと胸やけも知らない、(起こらないですね。)
ところが、そんな人でも熱が出ると目まいがするんです。
〔原文〕前小後大.即胸滿短氣.
〔訓読〕前小後大は。即ち胸滿短氣。
〔解説〕
脉に初めふれた時には小さく、沈めて行くと段々と大きく感じの脉状は、みぞおちがつかえ、呼吸の気が短くなる。
〔井上先生の解説補足〕みぞおち・横隔膜が硬くなって呼吸がみじかくなる。ハッハッハッとね。
〔原文〕一呼四至.一吸四至.病欲甚.
〔訓読〕一呼に四至、一吸に四至は、病甚しからんと浴す。
〔解説〕一呼吸で、一回吐く時に脉四拍動し、一回吸う時に脉が四拍動する(一息に八動)、
これから病気が非常に強くなる。
〔解説補足〕「一呼に四至、一吸に四至」は、一息に八動すること。これを「奪精脉」と言います。
〔原文〕脉洪大者.苦煩滿.
〔訓読〕脉洪大なる者は、煩滿を苦しむ。
〔解説〕奪精の一息八動で、かつ脉状が大にふとく踊って指に満ちて力のある脉の者は、陽邪が非常に盛んで心胸部が張り満ち煩わしく苦しむ病状をていする。
〔解説補足〕「奪精の一息八動、脉洪大、煩滿を苦しむ者」は、陽邪が内の(経絡)まで入って来て、傷寒・傷風と言う様な病気になっている。
〔原文〕沈細者.腹中痛.
〔訓読〕脉沈細なる者は、腹中痛む。
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ脉状が細くて沈んでいる脉の者は、腹が痛む。
〔原文〕滑者傷熱.
〔訓読〕脉滑(カツ)なる者は、熱に傷れ、
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ滑(すべ)る様な滑脉の者は、熱に傷(やぶ)られている。
〔解説補足〕血脈に熱が入った状態。
〔原文〕濇者中霧露.
〔訓読〕脉濇(ショク)なる者は、霧露(むろ)に中(あて)たるる。
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ脉状が濇(ショク)脉の者は、霧露に当てられたのだと。
〔原文〕一呼五至.一吸五至.其人當困.
〔訓読〕一呼に五至、一吸に五至、其の人当に困すべし、
〔解説〕一呼吸で、一回吐く時に脉五拍動し、一回吸う時に脉が五拍動する(一息十動の死脉)、
の場合は身体が段々衰弱してくると。
〔解説補足〕「一呼に五至、一吸に五至」は、一息に十動すること。これを「死脉」と言います。
〔原文〕沈細夜加.浮大晝加.
〔訓読〕沈細なる者は夜加わり、浮大なる者は昼加わる、
〔解説〕死脉の一息十動で、かつ脉状が沈細の患者は夜になると病状が重くなり、脉状が浮大の患者は昼間が非常に病状が悪化すると。
〔原文〕不大不小.雖困可治.
〔訓読〕大ならず小ならずは、困すと雖(いえど)も治すべし、
〔解説〕死脉の一息十動でも、脉状が大きくもなく小さくなければ非常に疲労困憊していても治る。
〔原文〕其有大小者.爲難治.
〔訓読〕其の大小ある者は、治し難(がた)し。
〔解説〕死脉の一息十動で、脉状が大きいか小さいかいずれかに偏れば、病気は治りにくい。
〔原文〕一呼六至.一吸六至.爲死脉也.
〔訓読〕一呼に六至、一吸に六至は、死脉となすなり。
〔解説〕一呼吸で一回吐く時に脉六拍動し、一回吸う時に脉が六拍動する、
一息十二動と言う極度な数脉で「絶命」と名付けられた決定的な死脉です。
〔原文〕沈細夜死.浮大晝死.
〔訓読〕沈細なる者は夜死し、浮大なる者は昼死す。
〔解説〕絶命脉の一息十二動で、脉状が沈細の患者は夜に死ぬ。脉状が浮大の患者は昼に死ぬと。
〔原文〕一呼一至.一吸一至.名曰損.
〔訓読〕一呼一至.一吸一至.名曰損.
〔解説〕一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
〔原文〕人雖能行.猶當著牀.
〔訓読〕人能(よ)く行くと雖(いえど)も、猶(なお)當(まさ)に床に着くべし、
〔解説〕今、現在よく仕事をしている人でも、一呼吸に二拍する遅い脉を打つ人は、近い内に病気になりますよと。
〔原文〕所以然者.血氣皆不足故也.
〔訓読〕然る所以の者は、血氣皆不足するが故なり。
〔解説〕こうゆう人は気と血が不足しているからであると。
〔原文〕再呼一至.再吸一至.名曰無魂.無魂者當死也.人雖能行.名曰行尸.
〔訓読〕再呼に一至、再吸に一至、名付けて無魂と曰(い)う。無魂の者は當に死すべし、人能(よ)く行くと雖(いえど)も、名付けて行尸(あんし)と曰う。
〔解説〕「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、
即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精」の事です。
この状態を名付けて無魂と言い、身体の精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。このような人が無意識に歩行したという本人は病を感じていない、これを名付けて行尸(あんし)と言い、そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
〔原文〕上部有脉.下部無脉.其人當吐.不吐者死.
〔訓読〕上部に脉有り、下部に脉無きは、其の人當に吐くべし、吐かざる者は死しす。
〔解説〕六部定位(ろくぶじょうい)の脉診に於いて、寸口・関上・尺中の脉位の内、寸口脉があって尺中の方に脉がない場合で、吐き気があれば生き、吐かない者は死ねと。
〔原文〕上部無脉.下部有脉.雖困無能爲害也.
〔訓読〕上部に脉無く、下部に脉有るは、困すると雖ども能く害をなすことなし。
〔解説〕寸口の方に脉が無くとも、尺中の方に脉が有る場合は、病に苦しんでも治ります。
〔原文〕所以然者.譬如人之有尺.樹之有根.枝葉雖枯槁.根本將自生.
〔訓読〕然る所以の者は、譬(たと)えば人に尺有れば、樹の根あるが如し、枝葉(しよう)枯槁(ここう)すと雖も、根本將(まさ)に自ら生きんとす。
〔解説〕これらの患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
〔原文〕脉有根本.人有元氣.故知不死.
〔訓読〕脉に根本有るは、人に元気あり、故に知らぬ死せざることを。
〔解説〕脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。
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以上、ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十四難 を終わります。
2014.4.23.