難経 第七十七難 

2012年04月10日

難経 ブログ勉強会 

難経 第七十七難 

『難経』を学ぶ事で、
現代鍼灸の論理的理解と実践臨床・手技に生かすコーナーです。
経絡鍼灸の個人的勉強会ではありますが、
経絡鍼灸師の学友ならびに先輩諸先生方の
ご意見・間違いの指摘・などを、
当院へお送りくだされば幸いです。
メール : yukkurido@ybb.ne.jp
ゆっくり堂 鍼灸院 鍼灸師:山口一誠

難経ブログ勉強会では、次の文献を参考にしています。
①経絡鍼療 古典講義 『難経』講義 井上恵理 先生 講義録  
②「難経の臨床考察」福島弘道(著)・
③「難経の研究」本間祥白(著)・井上恵理(校閲)

:::::

七十七難のポイントは、

上工(経絡治療を行える鍼灸師)は、
『未病治療』の「本治法」を常に行える意味を、
五行論から解説しています。
また、
鍼の即効主義を厳しく戒めています。

今回は経絡鍼療494号(平成23年12月号)
古典講義 『難経』講義 井上恵理先生 講義録 より。

はじめに、七十七難の原文と井上恵理 先生の訳を載せますね。

ーーーーーーーーーーー

(原文)

七十七難曰.

經言.
上工治未病.
中工治已病者.
何謂也。
然.
所謂治未病者.
見肝之病.
則知肝當傳之與脾。
故先實其脾氣.
無令得受肝之邪。
故曰治未病焉。
中工治已病者.
見肝之病.
不暁相傳.
但一心治肝。
故曰治已病也。

ーーーーーーーーー
井上恵理 先生の訳: 

七十七難に曰く、
経に言う、
上工は未病を治(ち)し、
中工は已(き)病を治す
とは何の謂ぞや。
然つなり、
所謂る未病を治すとは、
肝の病を見て、
即ち肝 當(まさに)これを脾に伝うべし。 
故に先づその脾の気を実して、
肝の邪を受けざらしむることなし。
故に曰く未病を治すと。
中工は已病を治すとは、
肝の病を見て、
相(あい)伝わることを暁(さと)さずして、
但(ただ)一心に肝の病を治す。
故に曰く已病を治すなりと。

ーーーーーーーーーーーー

井上恵理 先生の解説&言葉の意味

上工とは、鍼灸の上手な人と言う事です。 
中工とは、上工に次ぐ人と言う事です。

『未病を治す』とは、そこにまだ病気が無くともこれから病気が来そうだと言う所から治す事です。

「已病を治す」とは、病気のある所だけを治療する事です。

未病を治す例として、
今、肝の病(やまい)ここにある。
肝はこれを脾に伝える。

難経 第七十七難 
(図nk1) 
参考HP http://you-sinkyu.ddo.jp/c203.html

いわゆる木剋土(肝剋脾)と言う相剋関係で脾に伝える。
そう言う事を考えて、まず脾の気を実しせしめておいて、
そして肝の邪を受け入れない様にする事だと。
だからこれは「未病を治す」と言い事なのだと。

- まだ病気が脾まで行っていないから、その行ってい所に治療を加えるのだと。
脾の気が病まない内に脾の気を実しせしめておくのだと言う事なんです。

- 六十九難の治療法なんかは完全にこの方法を取る訳です。
例えば肺が虚して肝が実していれば、
必ず脾が虚して来るので、初めから肺と脾を補うと言うのが
『未病治療』であり、経絡治療の「本治法」に成るのです。

難経 第七十七難 
(図nk2)

「中工は已(き)病を治す」と言うのは、肝が実しているとすれば、肝だけを瀉す。
肺が虚していれば肺だけを補う。
今そこにあるものだけを「治療」する
- また、経絡なんか考えないで、
頭が痛ければ頭に刺す。
肩が痛ければ肩だけ刺す。
そうやっているのが己病の方です。
いわいる「中工は、肝の病を見て、相(あい)伝わることを暁(さと)さず」と言うのは、
病気と言うものは伝変すると言う事を知らない(察知できない)で、
「但(ただ)一心に肝の病を治す」
ただ肝だけを治療している。

ーーーーーーーーーーーー

ここからは、井上恵理先生の、
「鍼治療の本質とは」から山口一誠の考察をしてみました。

※ ゆっくり堂鍼灸院の「脱即効主義宣言」 

 鍼灸治療には太古の昔から、現在に至るも、
二通りの鍼灸路線の違いがあります。
一方は、「即効主義」です。
そうしてもう一方は「経絡主義」です。
経絡治療家は「本当の鍼」と言うものは「即効」するものではない事を知っています。
「即効」は偶然には起こるが、意識的に起させるものではないのです。
患者に治る時期まで待たせる事が「本当の鍼」なんです。
患者さんは「早く病気が治りたいから、鍼灸師に早く治してくれ」と、
要求しますが、
治療家がそれを“真に受けて”「早く治すと考えて施術をする」と
間違いを犯します。
それは、「病状を悪化させる」間違いであり、
「鍼は効かないとう言う評価を社会に与える」間違いを犯します。
そして、
これは論外ですが、肩が痛ければ肩だけ刺す。方法で、
その時は楽にさせるが、治さないで(治せないで)、
治療を長引かせる。
これは論外のやり方ですね。
即効主義よりもたちが悪いと思います。

 経絡鍼灸家は、こんな気持ちで、『未病治療』=『本治法』を施術しています。

井上恵理先生の講和「録南北経驗醫方大成」による「病症論」p200より、
井上先生の言霊を綴ってみます。

経絡鍼灸の真髄に少しでも近づければ良いのですが・・・

※ 患者さんの病気が改善した時の鍼灸師の心得について。

① 治療が上手く行った時はこちらから自慢話しをしない事です。
② 患者様から「おかげさまで良く成りました。」との感謝の言葉を頂いた時は静かに微笑んで拝聴します。
③ そして、その時の返答は、経絡鍼灸師の先人の遺徳を称え、患者さんの自然治癒力を称えます。
④ 上手く治らない時は、自分の拙劣(せつれつ:へたであること。)を心の中で悔やみます。

※ 『 鍼治療の本質とは、』
  身体の「気血」(榮気・衞気)の運行を調和する事によって病気を治させる方法なんですね。

やはり、経絡治療の本治法と標治法でゆっくりと病気を治させる方法が良いです。

「慢性病」や「子宝の身体つくり」など、「病気の治療」は1週間に1回。

「未病をの治す」には、月に1回。の鍼灸治療をお勧めします。


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礼節・愛・幸福・・感謝・ケセラセラ・
のびのびと希望を持って、ゆっくり行こうよ。♪
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°

 追伸:
数年前、私も一発芸の話しをしていました。
七十七難を分類して、
あれは偶然の出来事と思えるようになりました。

isseiちゃんヨリ・・・

2012.4.10 -  火曜日・・  

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