難経 第八十一難
2014年07月02日

難経 第八十一難
ゆっくり堂の『難経ポイント』 第八十一難 ank081
※ 八十一難のポイント其の一は、
難経も最終章の81番目まで、
読み進み、同時に臨床に役立ててきた鍼灸師は、
まだ、上工(上級の鍼師)の鍼術には及ばないが、
中工(中級の鍼師)として、
患者の病態を改善の方向に導く実力が着いて来ている。
そのような時期に「脉診だけで虚実の診断治療を行う」誤りを犯すしやすいものである。
だからこそ、
最終章の八十一難に於いて、
病体の心身全体の虚実の診断治療をしなさいと、
鍼灸師の心得をのべ、
上工(上級の鍼師)への鍼術を磨きなさいと導きの言葉で終えています。
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難経 第八十一難 原文
八十一難曰.
經言.
無實實虚虚.
損不足而益有餘.
是寸口脉耶.
將病自有虚實耶.
其損益奈何.
然.
是病非謂寸口脉也.
謂病自有虚實也.
假令肝實而肺虚.肝者木也.肺者金也.
金木當更相平.
當知金平木.
假令肺實而肝虚微少氣.用鍼不補其肝.
而反重實其肺.
故曰實實虚虚.
損不足而益有餘.
此者中工之所害也.
(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。
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八十一難の訓読
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
八十一難に曰く。
経に言う。
実を実し、虚を虚し、
不足を損(そん)じ有余を益(ま)すこと無かれとは。
是寸口の脉なりや、
將(ま)た病(やまい)自ら虚実ありや、
其の損益(そんえき)奈何(いかん)。
然(しか)るなり。
寸口の脉を謂(い)うにあらざるなり。
病自らの虚実あるを謂うなり。
仮令(たとえ)ば肝実して肺虚す、肝は木なり、肺は金なり、
金木当(まさ)に更々(かわるがわる)相(あい)平ぐべし、
当(まさ)に金木を平ぐことを知るべし。
仮令ば肺実して肝虚す、微少の氣、鍼を用いて其の肝を補(おぎなわ)ずして、
反(かえ)って重(かさ)ねて其の肺を実す。
故に実を実し、虚を虚し、不足を損(そん)じ有余を益(ま)すと曰う。
此れ中工の害する所なり。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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八十一難の解説
(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)
八十一難の解説をします。
黄帝内経・霊枢・から考察するに。
鍼の治療に於いて、
実しているものを実したり、虚しているものを虚せしめたり、
足らないものに損をかけたり、余っているのに余計なものを与えたりの「治療」があるが、
これは脉診だけで虚実の診断を決めて治療する事なのか、
又は病体の心身全体の虚実の診断をして、治療する事なのか、回答しなさい。
お答えします。
脉診だけで虚実の診断を決めてはいけません。
病体の心身全体の虚実の診断をして治療します。
例えば肺虚肝実証のとき、肝は木なり、肺は金なりの金剋木と言う相克関係において、
肺金と肝木は相手の勢いが強くなりすぎない様に平衡を保つ抑制が働くのだと。
①肝木実すれば、金剋木の自然治癒力が肺金に湧きあがり身体の均衡を保つ。
②肝木実には金剋木の相克治療で肺金を補う補法をして木と金のバランスを平衡にしなさいと。
鍼の治療方針を間違って、
例えば、肝虚肺実証に対して肺の補法を行うと、
肺実をさらに実し、肝虚をさらに虚し、
肝虚の不足をさらに減らし、肺実の有余をさらに増やす、間違った治療になる。
これらの間違った診断治療は中級の鍼師が陥る所であると。
詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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八十一難の詳細解説
(井上恵理先生の訓読・解説:経絡鍼療(501号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。
山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。
〔原文〕八十一難曰.
〔訓読〕八十一難に曰く。
〔解説〕八十一難の解説をします。
〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・から考察するに。
〔原文〕無實實虚虚.
損不足而益有餘.
是寸口脉耶.
將病自有虚實耶.
其損益奈何.
〔訓読〕実を実し、虚を虚し、
不足を損(そん)じ有余を益(ま)すこと無かれとは。
是寸口の脉なりや、
將(ま)た病(やまい)自ら虚実ありや、
其の損益(そんえき)奈何(いかん)。
〔解説〕鍼の治療に於いて、
実しているものを実したり、虚しているものを虚せしめたり、
足らないものに損をかけたり、余っているのに余計なものを与えたりの「治療」があるが、
これは脉診だけで虚実の診断を決めて治療する事なのか、
又は病体の心身全体の虚実の診断をして、治療する事なのか、回答しなさい。
〔解説補足〕ここでの問文での虚実・不足、有余は同じ意味です。
虚を虚しは、不足を損じと同義です。 実を実しは、有余を益すと同義です。
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。
〔原文〕是病非謂寸口脉也.
謂病自有虚實也.
〔訓読〕寸口の脉を謂(い)うにあらざるなり。
病自らの虚実あるを謂うなり。
〔解説〕脉診だけで虚実の診断を決めてはいけません。
病体の心身全体の虚実の診断をして治療します。
〔原文〕假令肝實而肺虚.肝者木也.肺者金也.
金木當更相平.
當知金平木.
〔訓読〕仮令(たとえ)ば肝実して肺虚す、肝は木なり、肺は金なり、
金木当(まさ)に更々(かわるがわる)相(あい)平ぐべし、
当(まさ)に金木を平ぐことを知るべし。
〔解説〕例えば肺虚肝実証のとき、肝は木なり、肺は金なりの金剋木と言う相克関係において、
肺金と肝木は相手の勢いが強くなりすぎない様に平衡を保つ抑制が働くのだと。
①肝木実すれば、金剋木の自然治癒力が肺金に湧きあがり身体の均衡を保つ。
②肝木実には金剋木の相克治療で肺金を補う補法をして木と金のバランスを平衡にしなさいと。
〔原文〕假令肺實而肝虚微少氣.用鍼不補其肝.
而反重實其肺。
故曰實實虚虚.
損不足而益有餘.
〔訓読〕仮令ば肺実して肝虚す、微少の氣、鍼を用いて其の肝を補(おぎなわ)ずして、
反(かえ)って重(かさ)ねて其の肺を実す。
故に実を実し、虚を虚し、不足を損(そん)じ有余を益(ま)すと曰う。
〔解説〕鍼の治療方針を間違って、
例えば、肝虚肺実証に対して肺の補法を行うと、
肺実をさらに実し、肝虚をさらに虚し、
肝虚の不足をさらに減らし、肺実の有余をさらに増やす、間違った治療になる。
〔原文〕此者中工之所害也.
〔訓読〕此れ中工の害する所なり。
〔解説〕これらの間違った診断治療は中級の鍼師が陥る所である。
〔解説補足〕
難経も最終章の81番目まで、読み進み、同時に臨床に役立ててきた鍼灸師は、
まだ、上工(上級の鍼師)の鍼術には及ばないが、
中工(中級の鍼師)として、患者の病態を改善の方向に導く実力が着いて来ている。
そのような時期に「脉診だけで虚実の診断治療を行う」誤りを犯すしやすいものである。
だからこそ、最終章の八十一難に於いて、病体の心身全体の虚実の診断治療をしなさいと、
鍼灸師の心得をのべ、上工(上級の鍼師)への鍼術を磨きなさいと導きの言葉で終えています。
2014.7.2. 掲載日。
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そのほかの、
難経解説をご覧になりたい方は、
こちらのHPをご覧ください。
http://you-sinkyu.ddo.jp/ank00.html
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