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バタッと倒れて死んでしまう人の脉は()

2014年04月23日

  十四難  




詳しくはこちらのHPの下段の
初学者用経絡鍼灸教科書バナーの 
難経コーナーからご覧ください。
http://www.yukkuridou.com/


  難経 第十四難

ゆっくり堂の『難経ポイント』  第十四難   ank014

  
※ 十四難のポイント其の一は、

  十四難は一回の呼吸と脈拍回数の関係に於いての病の診方を述べています。


※ 十四難のポイント其の二は、

健康で正常な脉状は、一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する時です。


※ 十四難のポイント其の三、

 もうすぐ病気になる人は、一呼吸に二拍動する遅い脉を打つ人です。
 つまり、一回吐く時に脉が一拍動し、一回吸う時に脉が一拍動する状態ですね。


※ 十四難のポイント其の四は、

  元気なように見えていて、バタッと倒れて死んでしまう人の脉は、
一呼吸に一拍する遅い脉を打っている人です。そして、この状態を「無魂」と言います。
身体の中に精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。
このような人が無意識に歩行しています。本人は病を感じていません。
この状態を古典では「行尸(あんし)」と言います。
そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)


※ 十四難のポイント其の五は、

  もう少し人生を楽しみたい方は「腎気」を養う事です。
其の為には、左尺中の脉、即ち腎の脉が消えないように、経絡鍼灸をお受けください。

臨床で、患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、
たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。


  難経 第十四難

難経 第十四難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

十四難曰.

脉有損至.何謂也.
然.
至之脉.一呼再至曰平.三至曰離經.四至曰奪精.五至曰死.六至曰命絶.此至之脉也.
何謂損.一呼一至曰離經.二呼一至曰奪精.三呼一至曰死.四呼一至曰命絶.此謂損之脉也.
至脉從下上.損脉從上下也.
損脉之爲病.奈何.
然.
一損損於皮毛.皮聚而毛落.
二損損於血脉.血脉虚少.不能榮於五藏六府也.
三損損於肌肉.肌肉消痩.飮食不爲肌膚.
四損損於筋.筋緩不能自收持也.
五損損於骨.骨痿不能起於牀.
反此者至於收病也.
從上下者.骨痿不能起於牀者死.
從下上者.皮聚而毛落者死.
治損之法奈何.
然.
損其肺者.益其氣.
損其心者.調其榮衞.
損其脾者.調其飮食.適其寒温.
損其肝者.緩其中.
損其腎者.益其精.
此治損之法也.

有一呼再至.一吸再至.
有一呼三至.一吸三至.
有一呼四至.一吸四至.
有一呼五至.一吸五至.
有一呼六至.一吸六至.
有一呼一至.一吸一至.
有再呼一至.再吸一至.
有呼吸再至.
脉來如此.何以別知其病也.
然.
脉來一呼再至.一吸再至.不大不小.曰平.
一呼三至.一吸三至.爲適得病.前大後小.即頭痛目眩.前小後大.即胸滿短氣.
一呼四至.一吸四至.病欲甚.脉洪大者.苦煩滿.沈細者.腹中痛.滑者傷熱.濇者中霧露.
一呼五至.一吸五至.其人當困.沈細夜加.浮大晝加.不大不小.雖困可治.其有大小者.爲難治.
一呼六至.一吸六至.爲死脉也.沈細夜死.浮大晝死.
一呼一至.一吸一至.名曰損.人雖能行.猶當著牀.所以然者.血氣皆不足故也.
再呼一至.再吸一至.名曰無魂.無魂者當死也.人雖能行.名曰行尸.
上部有脉.下部無脉.其人當吐.不吐者死.
上部無脉.下部有脉.雖困無能爲害也.
所以然者.譬如人之有尺.樹之有根.枝葉雖枯槁.根本將自生.
脉有根本.人有元氣.故知不死.


   十四難の訓読

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十四難に曰く。
脉に損至ありとは、何の謂ぞや。
然(しか)るなり。
至の脉は、一呼に再至を平と曰い、三至を離経(りけい)と曰い、四至を奪精と曰い、
五至を死と曰い、六至を命絶と曰う。此れ至の脉なり。
何をか損と謂う、一呼一至を離経(りけい)と曰い、二呼(再呼)一至を奪精と曰い、
三呼一至を死と曰い、四呼一至を命絶と曰う。此れ損脉の謂いなり。
至脉は下より上(のぼ)り、損脉は上より下(くだ)るなり。
損脉の病たること、いかん。
然(しか)るなり。
一損は皮毛を損す、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ。
二損は血脉を損す、血脉虚少にして、五臓六腑を榮すること能わず。
三損は肌肉を損す、肌肉消痩して、飲食も肌膚の為ならず。
四損は筋を損す、筋緩んで自ら収持すること能わず。
五損は骨を損す、骨痿(な)えて床に起こと能わず。
此に反する者は至脉の病なり。
上より下る者は、骨痿て床に起つこと能わざる者は死す。
下より上る者は、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ者は死す。
損を治するの法いかに。
然(しか)るなり。
其の肺を損する者は、其の気を益す。
其の心を損する者は、其の榮衞を調(ととの)える。
其の脾を損する者は、其の飲食を調え、其の寒温に適(かな)う。
其の肝を損する者は、其の中を緩(ゆる)くす。
其の腎を損する者は、其の精を益す。
此れ損を治するの法なり。
脉に、一呼再至、一吸再至あり。一呼三至、一吸三至あり。一呼四至、一吸四至あり、
一呼五至、一吸五至あり。一呼六至、一吸六至あり。一呼一至、一吸一至あり。
再呼一至、再吸一至あり。呼吸再至あり。
脉来ることこの如き、何を以ってか其の病を別ち知らん。
然(しか)るなり。
脉来ること一呼に再至、一吸に再至、大ならず小ならず、平と曰う。
一呼に三至、一吸に三至、適(はじ)めて病を得るとなす。
前(まえ)大、後(うしろ)少なるは、即ち頭痛目眩。前小後大は。即ち胸滿短氣。
一呼に四至、一吸に四至は、病甚しからんと浴す。
脉洪大なる者は、煩滿を苦しむ。脉沈細なる者は、腹中痛む。
脉滑(カツ)なる者は、熱に傷れ、脉濇(ショク)なる者は、霧露(むろ)に中(あて)たるる。
一呼に五至、一吸に五至、其の人当に困すべし、
沈細なる者は夜加わり、浮大なる者は昼加わる、大ならず小ならずは、困すと雖(いえど)も治すべし、
其の大小ある者は、治し難(がた)し。
一呼に六至、一吸に六至は、死脉となすなり。沈細なる者は夜死し、浮大なる者は昼死す。
一呼一至.一吸一至.名曰損.
人能(よ)く行くと雖(いえど)も、猶(なお)當(まさ)に床に着くべし、
然る所以の者は、血氣皆不足するが故なり。
再呼に一至、再吸に一至、名付けて無魂と曰(い)う。無魂の者は當に死すべし、人能(よ)く行くと雖(いえど)も、名付けて行尸(あんし)と曰う。
上部に脉有り、下部に脉無きは、其の人當に吐くべし、吐かざる者は死しす。
上部に脉無く、下部に脉有るは、困すると雖ども能く害をなすことなし。
然る所以の者は、譬(たと)えば人に尺有れば、樹の根あるが如し、枝葉(しよう)枯槁(ここう)すと雖も、根本將(まさ)に自ら生きんとす。
脉に根本有るは、人に元気あり、故に知らぬ死せざることを。

 詳しくは各先生の文献を参照されたし。


  十四難の解説

(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十四難の解説をします。
「損至の脉」とは、どの様な事なのか、説明しなさい。
お答えします。
 至の脉(数脉:速い脉)について説明します。
一呼吸に吐く時に脉が二拍動し、吸う時に脉が二拍動するを平脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉三拍動し、吸う時に脉が三拍動するを離経脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が四拍動し、吸う時に脉が四拍動するを奪精脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が五拍動し、吸う時に脉が五拍動するを死脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が六拍動し、吸う時に脉が六拍動するを命絶脉と言います。
これが至の脉(数脉)の説明です。
 損脉(遅い脉)について説明します。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精脉」と言います。
三呼一動、三吸一動、即ち一呼吸半に一拍する遅い脉を「損の死脉」と言います。
四呼一動、四吸一動、即ち二呼吸半に一拍する遅い脉を「損の命絶脉」と言います。
これが損脉(遅い脉)の説明です。
 至脉と言うものは下より上(あが)るもの、損脉は上より下(さ)がるものである。
損脉の病気の種類と症状を説明しなさい。
お答えします。
一損とは、皮膚と毛髪を損(そこ)ない、皮膚が痿縮して皺になって脱毛する。
二損と言うものは血脉を損ない、血脉と言う血を運ぶ蔵(くら)が虚少になるので、
五臓六腑を栄養することが出来なくなる。
三損と言うものは筋肉を損なう。食事をしても皮膚や筋肉に栄養が届かないので筋肉が痩せ細ってくる。
四損と言うものは筋(腱)を損なう。関節を維持している腱が緩んで自立歩行も出来ない。
五損と言うものは骨を損ない、骨が委縮して床に立つことも歩く事も出来なくなる。
ここまでは損脉(遅脉)の病気の順序に従い記述したが、
この順序の反対に進む病気は至脉(数脉)の病である。即ち下の腎から一損と行き、五損で肺に行く。
損脉で肺の一損から始まって五損に至り骨が委縮して床に起立出来なくなった者は死んでしまうと。
至脉(数脉)の病で腎の一損から始まって五損で肺に至り皮膚と毛髪を損(そこ)ない、
皮膚が痿縮して脱毛する者は死んでしまうと。
損の病気を治療する方法を説明しなさい。
お答えします。
肺経の病気の患者には、気を養う治療をする事。
心経の病気の患者には、血液の循環が悪いのだから血を養う治療をする事。
脾経の病気の患者には、飲食物に気を付け、そして暑さ寒さに心得た生活を指導する。
肝経の病気の患者には、筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。
腎経の病気の患者には、陰精を補う治療をする事。
以上が五損を治療する法則である。
至の脉(速い脉)の説明。
一呼に二動、一吸に二動は平脉です。一呼に三動、一吸に三動は離経脉です。
一呼に四動、一吸に動は奪精脉です。一呼五に動、一吸五に動は死脉です。
一呼に六動、一吸に六動は命絶脉です。(一呼吸に十二動は命絶脉と言う事です。)
損脉(遅い脉)について説明。
「一呼一至、一吸一至あり。」これは一息二動ですから損脉の離経(りけい)の事です。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を損脉の奪精脉の事です。呼吸には再至があります。「再至」とは二動と言う事です。
この様なそれぞれの脉を顕すとき、どの様な症状になるかを分別して説明しなさい。
お答えします。
脉状を診るに一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する。
そして脉状は大きくもなく小さくもない、これを平脉と言います。
一呼吸で、一回吐く時に脉三拍動し、一回吸う時に脉が三拍動する、
この時より初めて病気の段階に入ったと。
脉に初めふれた時には非常に大きく感じ、沈めて行くと段々と小さくなる脉状は、
頭痛と目眩(めまい)がする。感冒ですね。
脉に初めふれた時には小さく、沈めて行くと段々と大きく感じの脉状は、みぞおちがつかえ、呼吸の気が短くなる。
一呼吸で、一回吐く時に脉四拍動し、一回吸う時に脉が四拍動する(一息に八動)、
    これから病気が非常に強くなる。
奪精の一息八動で、かつ脉状が大にふとく踊って指に満ちて力のある脉の者は、陽邪が非常に盛んで心胸部が張り満ち煩わしく苦しむ病状をていする。
奪精の一息八動脉で、かつ脉状が細くて沈んでいる脉の者は、腹が痛む。
奪精の一息八動脉で、かつ滑(すべ)る様な滑脉の者は、熱に傷(やぶ)られている。
奪精の一息八動脉で、かつ脉状が濇(ショク)脉の者は、霧露に当てられたのだと。
一呼吸で、一回吐く時に脉五拍動し、一回吸う時に脉が五拍動する(一息十動の死脉)、
    の場合は身体が段々衰弱してくると。
死脉の一息十動で、かつ脉状が沈細の患者は夜になると病状が重くなり、脉状が浮大の患者は昼間が非常に病状が悪化すると。
死脉の一息十動でも、脉状が大きくもなく小さくなければ非常に疲労困憊していても治る。
死脉の一息十動で、脉状が大きいか小さいかいずれかに偏れば、病気は治りにくい。
一呼吸で一回吐く時に脉六拍動し、一回吸う時に脉が六拍動する、
一息十二動と言う極度な数脉で「絶命」と名付けられた決定的な死脉です。
絶命脉の一息十二動で、脉状が沈細の患者は夜に死ぬ。脉状が浮大の患者は昼に死ぬと。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
今、現在よく仕事をしている人でも、一呼吸に二拍する遅い脉を打つ人は、近い内に病気になりますよと。
こうゆう人は気と血が不足しているからであると。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、
 即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精」の事です。
この状態を名付けて無魂と言い、身体の精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。このような人が無意識に歩行したという本人は病を感じていない、これを名付けて行尸(あんし)と言い、そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)
六部定位(ろくぶじょうい)の脉診に於いて、寸口・関上・尺中の脉位の内、寸口脉があって尺中の方に脉がない場合で、吐き気があれば生き、吐かない者は死ねと。
寸口の方に脉が無くとも、尺中の方に脉が有る場合は、病に苦しんでも治ります。
これらの患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。
脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。



    十四難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(427・428号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕十四難曰
〔訓読〕十四難に曰く。
〔解説〕十四難の解説をします。

〔原文〕脉有損至.何謂也.
〔訓読〕脉に損至ありとは、何の謂ぞや。
〔解説〕「損至の脉」とは、どの様な事なのか、説明しなさい。
〔解説補足〕十四の難では脉の「数」について書かれています。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
至之脉.一呼再至曰平.三至曰離經.四至曰奪精.五至曰死.六至曰命絶.此至之脉也.
〔訓読〕
至の脉は、一呼に再至を平と曰い、三至を離経(りけい)と曰い、四至を奪精と曰い、五至を死と曰い、六至を命絶と曰う。此れ至の脉なり。
〔解説〕
至の脉(数脉:速い脉)について説明します。
一呼吸に吐く時に脉が二拍動し、吸う時に脉が二拍動するを平脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉三拍動し、吸う時に脉が三拍動するを離経脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が四拍動し、吸う時に脉が四拍動するを奪精脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が五拍動し、吸う時に脉が五拍動するを死脉と言います。
一呼吸に吐く時に脉が六拍動し、吸う時に脉が六拍動するを命絶脉と言います。
これが至の脉(数脉)の説明です。

〔解説補足〕「一呼に再至」と言うのは、息を吐くときと吸う時の意味で、吐く時に脉二動、吸う時に脉二動の意味です。

〔原文〕
何謂損.一呼一至曰離經.二呼一至曰奪精.三呼一至曰死.四呼一至曰命絶.此謂損之脉也.
〔訓読〕
何をか損と謂う、一呼一至を離経(りけい)と曰い、二呼(再呼)一至を奪精と曰い、三呼一至を死と曰い、四呼一至を命絶と曰う。此れ損脉の謂いなり。
〔解説〕
損脉(遅い脉)について説明します。
一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。
二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精脉」と言います。
三呼一動、三吸一動、即ち一呼吸半に一拍する遅い脉を「損の死脉」と言います。
四呼一動、四吸一動、即ち二呼吸半に一拍する遅い脉を「損の命絶脉」と言います。
これが損脉(遅い脉)の説明です。


〔原文〕至脉從下上.損脉從上下也.
〔訓読〕至脉は下より上(のぼ)り、損脉は上より下(くだ)るなり。
〔解説〕至脉と言うものは下より上(あが)るもの、損脉は上より下(さ)がるものである。
〔解説補足〕
「下より上(あが)る」とは、腎から肺に至るものです。この順序は腎・肝・脾・心・肺と行く。
「上より下(さ)がる」とは、肺から腎に至るものです。この順序は肺・心・脾・肝・腎と行く。
それから、形態的には、
「下より上る至脉」とは、骨・筋(すじ)・肌肉・血脉・皮膚と行く。
「上より下がる損脉」とは、皮膚から血脉に入って筋肉、筋(靭帯や神経)それから骨と下る。

〔原文〕損脉之爲病.奈何.
〔訓読〕損脉の病たること、いかん。
〔解説〕損脉の病気の種類と症状を説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕一損損於皮毛.皮聚而毛落.
〔訓読〕一損は皮毛を損す、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ。
〔解説〕一損とは、皮膚と毛髪を損(そこ)ない、皮膚が痿縮して皺になって脱毛する。

〔解説補足〕「皮聚って」とは、皮膚が痿縮して皺になるの意味です。

〔原文〕二損損於血脉.血脉虚少.不能榮於五藏六府也.
〔訓読〕二損は血脉を損す、血脉虚少にして、五臓六腑を榮すること能わず。
〔解説〕二損と言うものは血脉を損ない、血脉と言う血を運ぶ蔵(くら)が虚少になるので、
五臓六腑を栄養することが出来なくなる。

〔解説補足〕
二損は、臓腑を潤すことが出来ないから結果として肌が乾いて色を失って大便が欠っしてくる。
(肌があれ、化粧のノリが悪くなり、便秘する訳ですね。)

〔第十四難での言葉の意味〕「血脉虚少にして」とは血液の循環が悪くなる事です。

〔原文〕三損損於肌肉.肌肉消痩.飮食不爲肌膚.
〔訓読〕三損は肌肉を損す、肌肉消痩して、飲食も肌膚の為ならず。
〔解説〕三損と言うものは筋肉を損なう。食事をしても皮膚や筋肉に栄養が届かないので筋肉が痩せ細ってくる。

〔原文〕四損損於筋.筋緩不能自收持也.
〔訓読〕四損は筋を損す、筋緩んで自ら収持すること能わず。
〔解説〕四損と言うものは筋(腱)を損なう。関節を維持している腱が緩んで自立歩行も出来ない。

〔原文〕五損損於骨.骨痿不能起於牀.
〔訓読〕五損は骨を損す、骨痿(な)えて床に起こと能わず。
〔解説〕五損と言うものは骨を損ない、骨が委縮して床に立つことも歩く事も出来なくなる。

〔原文〕反此者至於收病也.
〔訓読〕此に反する者は至脉の病なり。
〔解説〕ここまでは損脉(遅脉)の病気の順序に従い記述したが、
この順序の反対に進む病気は至脉(数脉)の病である。即ち下の腎から一損と行き、五損で肺に行く。
し。

〔原文〕從上下者.骨痿不能起於牀者死.
〔訓読〕上より下る者は、骨痿て床に起つこと能わざる者は死す。
〔解説〕損脉(遅脉)で肺の一損から始まって五損に至り骨が委縮して床に起立出来なくなった者は死んでしまうと。

〔原文〕從下上者.皮聚而毛落者死.
〔訓読〕下より上る者は、皮(ひ)聚(あつま)って毛落つ者は死す。
〔解説〕至脉(数脉)の病で腎の一損から始まって五損で肺に至り皮膚と毛髪を損(そこ)ない、
皮膚が痿縮して脱毛する者は死んでしまうと。

〔原文〕治損之法奈何.
〔訓読〕損を治するの法いかに。
〔解説〕損の病気を治療する方法を説明しなさい。
〔解説補足〕「損の病気」とは、損脉(遅脉)と至脉(数脉)においての五臓の病気を指します。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕損其肺者.益其氣.
〔訓読〕其の肺を損する者は、其の気を益す。
〔解説〕肺経の病気の患者には、気を養う治療をする事。

〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
これは証と病が一致した時に「損病」の症状が出て来る。
脱毛症の患者は肺の病としてその気を養う。
血を養うのではなくて、気を中心に治療をする事。
- 肺虚証の脱毛症は治る。肝虚証の脱毛症は治らないか、治りにくい。
- 固有体質で肝虚証・腎虚証体質の人は頭が禿げて来ます。若禿ね。
脾虚・肺虚証の体質者は白髪になる。

〔解説補足〕肺を傷ることは、損脉(遅脉)では第一損、至脉(数脉)では第五損に該当する。

〔原文〕損其心者.調其榮衞.
〔訓読〕其の心を損する者は、其の榮衞を調(ととの)える。
〔解説〕心経の病気の患者には、血液の循環が悪いのだから血を養う治療をする事。

〔原文〕損其脾者.調其飮食.適其寒温.
〔訓読〕其の脾を損する者は、其の飲食を調え、其の寒温に適(かな)う。
〔解説〕脾経の病気の患者には、飲食物に気を付け、そして暑さ寒さに心得た生活を指導する。

〔原文〕損其肝者.緩其中.
〔訓読〕其の肝を損する者は、其の中を緩(ゆる)くす。
〔解説〕肝経の病気の患者には、筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。

〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕筋に来る病と言うものは、初めは筋が突っ張って後に緩んでくる。
だから筋を筋を緩くするための治療をする。筋の緩んだ所に治療を加える方法が良い。

〔原文〕損其腎者.益其精.
〔訓読〕其の腎を損する者は、其の精を益す。
〔解説〕腎経の病気の患者には、陰精を補う治療をする事。

〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
ここでは陽精ではなく陰精を補う事。精気と言うのは腎が主る。 筋は気に属する。
陰の血は腎・陰の気は肝、陽の血は心・陽の気は肺、その中の飲食寒温を整える事は真ん中に位置している事になります。

〔原文〕此治損之法也.
〔訓読〕此れ損を治するの法なり。
〔解説〕以上が五損を治療する法則である。

〔解説補足〕注意:ここでに損は損脉の意味ではなくて五臓の損傷を指しています。

〔原文〕脉.有一呼再至.一吸再至.有一呼三至.一吸三至.有一呼四至.一吸四至.有一呼五至.一吸五至.有一呼六至.一吸六至.有一呼一至.一吸一至.有再呼一至.再吸一至.有呼吸再至.
〔訓読〕脉に、一呼再至、一吸再至あり。一呼三至、一吸三至あり。一呼四至、一吸四至あり、
一呼五至、一吸五至あり。一呼六至、一吸六至あり。一呼一至、一吸一至あり。再呼一至、再吸一至あり。呼吸再至あり。
〔解説〕 
至の脉(速い脉)の説明。
一呼に二動、一吸に二動は平脉です。一呼に三動、一吸に三動は離経脉です。
一呼に四動、一吸に動は奪精脉です。一呼五に動、一吸五に動は死脉です。
一呼に六動、一吸に六動は命絶脉です。(一呼吸に十二動は命絶脉と言う事です。)
損脉(遅い脉)について説明。
「一呼一至、一吸一至あり。」これは一息二動ですから損脉の離経(りけい)の事です。
「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、即ち一呼吸に一拍する遅い脉を損脉の奪精脉の事です。呼吸には再至があります。「再至」とは二動と言う事です。

〔原文〕脉來如此.何以別知其病也.
〔訓読〕脉来ることこの如き、何を以ってか其の病を別ち知らん。
〔解説〕この様なそれぞれの脉を顕すとき、どの様な症状になるかを分別して説明しなさい。
〔井上先生の解説補足〕この様な脉を顕す病の深浅・邪気の寒熱・生死等をどの様に分けているのか説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕脉來一呼再至.一吸再至.不大不小.曰平.
〔訓読〕脉来ること一呼に再至、一吸に再至、大ならず小ならず、平と曰う。
〔解説〕
脉状を診るに一呼吸で、一回吐く時に脉が二拍動し、一回吸う時に脉が二拍動する。
そして脉状は大きくもなく小さくもない、これを平脉と言います。

〔原文〕一呼三至.一吸三至.爲適得病.
〔訓読〕一呼に三至、一吸に三至、適(はじ)めて病を得るとなす。
〔解説〕
一呼吸で、一回吐く時に脉三拍動し、一回吸う時に脉が三拍動する、
この時より初めて病気の段階に入ったと。
〔解説補足〕
「一呼に三至、一吸に三至、」は一息に六動する事です。そしてこれを「離経脉」と言います。

〔原文〕前大後小.即頭痛目眩.
〔訓読〕前(まえ)大、後(うしろ)少なるは、即ち頭痛目眩。
〔解説〕
脉に初めふれた時には非常に大きく感じ、沈めて行くと段々と小さくなる脉状は、
頭痛目眩がする。感冒ですね。
〔解説補足〕
〔井上先生の解説補足〕
「前」と言うのは「初めて」脉に指をあてた時にと言う意味です。
「後」と言うのはそこから指を沈めた時にと言う意味です。即ち浮沈の事です。
初め脉に当てた時には非常に大きく感じると。沈めて行くと段々と小さくなると言う事です。
「前大後少」になる脉状は頭痛目眩がする。感冒ですね。皮膚に邪が当てられた時にはこうゆう症状が起きると。
〔井上先生の臨床実践解説参考例補足〕
ところが〔実際の臨床では〕頭痛する人は目まいをしないんです。
頭痛と目眩(めまい)は一緒にくると思うと間違いです。
目まいをする人は頭痛はしないと言う事です。この場合は・・・。
人間には、頭痛を知っている人と知らない人があるのです。
そして、頭痛を知らない人は肩こりと胸やけも知らない、(起こらないですね。)
ところが、そんな人でも熱が出ると目まいがするんです。


〔原文〕前小後大.即胸滿短氣.
〔訓読〕前小後大は。即ち胸滿短氣。
〔解説〕
脉に初めふれた時には小さく、沈めて行くと段々と大きく感じの脉状は、みぞおちがつかえ、呼吸の気が短くなる。
〔井上先生の解説補足〕みぞおち・横隔膜が硬くなって呼吸がみじかくなる。ハッハッハッとね。

〔原文〕一呼四至.一吸四至.病欲甚.
〔訓読〕一呼に四至、一吸に四至は、病甚しからんと浴す。
〔解説〕一呼吸で、一回吐く時に脉四拍動し、一回吸う時に脉が四拍動する(一息に八動)、
    これから病気が非常に強くなる。
〔解説補足〕「一呼に四至、一吸に四至」は、一息に八動すること。これを「奪精脉」と言います。

〔原文〕脉洪大者.苦煩滿.
〔訓読〕脉洪大なる者は、煩滿を苦しむ。
〔解説〕奪精の一息八動で、かつ脉状が大にふとく踊って指に満ちて力のある脉の者は、陽邪が非常に盛んで心胸部が張り満ち煩わしく苦しむ病状をていする。
〔解説補足〕「奪精の一息八動、脉洪大、煩滿を苦しむ者」は、陽邪が内の(経絡)まで入って来て、傷寒・傷風と言う様な病気になっている。

〔原文〕沈細者.腹中痛.
〔訓読〕脉沈細なる者は、腹中痛む。
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ脉状が細くて沈んでいる脉の者は、腹が痛む。

〔原文〕滑者傷熱.
〔訓読〕脉滑(カツ)なる者は、熱に傷れ、
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ滑(すべ)る様な滑脉の者は、熱に傷(やぶ)られている。
〔解説補足〕血脈に熱が入った状態。

〔原文〕濇者中霧露.
〔訓読〕脉濇(ショク)なる者は、霧露(むろ)に中(あて)たるる。
〔解説〕奪精の一息八動脉で、かつ脉状が濇(ショク)脉の者は、霧露に当てられたのだと。

〔原文〕一呼五至.一吸五至.其人當困.
〔訓読〕一呼に五至、一吸に五至、其の人当に困すべし、
〔解説〕一呼吸で、一回吐く時に脉五拍動し、一回吸う時に脉が五拍動する(一息十動の死脉)、
    の場合は身体が段々衰弱してくると。
〔解説補足〕「一呼に五至、一吸に五至」は、一息に十動すること。これを「死脉」と言います。

〔原文〕沈細夜加.浮大晝加.
〔訓読〕沈細なる者は夜加わり、浮大なる者は昼加わる、
〔解説〕死脉の一息十動で、かつ脉状が沈細の患者は夜になると病状が重くなり、脉状が浮大の患者は昼間が非常に病状が悪化すると。

〔原文〕不大不小.雖困可治.
〔訓読〕大ならず小ならずは、困すと雖(いえど)も治すべし、
〔解説〕死脉の一息十動でも、脉状が大きくもなく小さくなければ非常に疲労困憊していても治る。

〔原文〕其有大小者.爲難治.
〔訓読〕其の大小ある者は、治し難(がた)し。
〔解説〕死脉の一息十動で、脉状が大きいか小さいかいずれかに偏れば、病気は治りにくい。

〔原文〕一呼六至.一吸六至.爲死脉也.
〔訓読〕一呼に六至、一吸に六至は、死脉となすなり。
〔解説〕一呼吸で一回吐く時に脉六拍動し、一回吸う時に脉が六拍動する、
    一息十二動と言う極度な数脉で「絶命」と名付けられた決定的な死脉です。

〔原文〕沈細夜死.浮大晝死.
〔訓読〕沈細なる者は夜死し、浮大なる者は昼死す。
〔解説〕絶命脉の一息十二動で、脉状が沈細の患者は夜に死ぬ。脉状が浮大の患者は昼に死ぬと。


〔原文〕一呼一至.一吸一至.名曰損.
〔訓読〕一呼一至.一吸一至.名曰損.
〔解説〕一呼一動、一吸一動、即ち一呼吸に二拍する遅い脉を「損の離経脉」と言います。

〔原文〕人雖能行.猶當著牀.
〔訓読〕人能(よ)く行くと雖(いえど)も、猶(なお)當(まさ)に床に着くべし、
〔解説〕今、現在よく仕事をしている人でも、一呼吸に二拍する遅い脉を打つ人は、近い内に病気になりますよと。

〔原文〕所以然者.血氣皆不足故也.
〔訓読〕然る所以の者は、血氣皆不足するが故なり。
〔解説〕こうゆう人は気と血が不足しているからであると。

〔原文〕再呼一至.再吸一至.名曰無魂.無魂者當死也.人雖能行.名曰行尸.
〔訓読〕再呼に一至、再吸に一至、名付けて無魂と曰(い)う。無魂の者は當に死すべし、人能(よ)く行くと雖(いえど)も、名付けて行尸(あんし)と曰う。
〔解説〕「再呼一至、再吸一至あり。」は「二呼(再呼)一至」で、二呼一動、二吸一動、
    即ち一呼吸に一拍する遅い脉を「損の奪精」の事です。
この状態を名付けて無魂と言い、身体の精気が無くなった病気です。身体の精気が無くなれば必ず死にます。このような人が無意識に歩行したという本人は病を感じていない、これを名付けて行尸(あんし)と言い、そのうちバタッと倒れて死んでしまいます。(歩行する死体ですね。)

〔原文〕上部有脉.下部無脉.其人當吐.不吐者死.
〔訓読〕上部に脉有り、下部に脉無きは、其の人當に吐くべし、吐かざる者は死しす。
〔解説〕六部定位(ろくぶじょうい)の脉診に於いて、寸口・関上・尺中の脉位の内、寸口脉があって尺中の方に脉がない場合で、吐き気があれば生き、吐かない者は死ねと。

〔原文〕上部無脉.下部有脉.雖困無能爲害也.
〔訓読〕上部に脉無く、下部に脉有るは、困すると雖ども能く害をなすことなし。
〔解説〕寸口の方に脉が無くとも、尺中の方に脉が有る場合は、病に苦しんでも治ります。

〔原文〕所以然者.譬如人之有尺.樹之有根.枝葉雖枯槁.根本將自生.
〔訓読〕然る所以の者は、譬(たと)えば人に尺有れば、樹の根あるが如し、枝葉(しよう)枯槁(ここう)すと雖も、根本將(まさ)に自ら生きんとす。
〔解説〕これらの患者の症状を考察すると、たとえば尺脉が有ると言う事は木に根が有る様なもので、たとえ枝や葉っぱが枯れても根は自ら生きる力を蓄えているから大丈夫だと。

〔原文〕脉有根本.人有元氣.故知不死.
〔訓読〕脉に根本有るは、人に元気あり、故に知らぬ死せざることを。
〔解説〕脉に根本が有る者は元気あるので死なないと。

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以上、ゆっくり堂の『難経ポイント』 第十四難 を終わります。


2014.4.23.



 

Posted by やまちゃん at 11:38 | Comments(0) | 難経 ブログ勉強会 

病気が悪くなるか、改善するかの診断方法。難経十三難

2014年04月05日



  

難経 第十三難

ゆっくり堂の『難経ポイント』  第十三難   ank013
  
※ 十三難のポイント其の一、

十三難で重要なのは診断に於いて「脉状」を中心にして、各々の五蔵の色体表を診る事です。

※ 十三難のポイント其の二、

五臓の脉状と、五声、五色、五臭、五味には相生と相克の関係があります。

※ 十三難のポイント其の三、

五臓の脉状と尺部とも相応しているのが健康である。
相応しない患者は病気になっているのだと、
特に脉状と相剋の色体表は病が重い事になります。

病気が悪くなるか、改善するかの診断方法ですね。


詳しくはこちらのHPの下段の
初学者用経絡鍼灸教科書バナーの 
難経コーナーからご覧ください。
http://www.yukkuridou.com/


難経 第十三難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

十三難曰.

經言.
見其色而不得其脉.反得相勝之脉者.即死.得相生之脉者.病即自已.
色之與脉.當參相應.爲之奈何.
然.
五藏有五色.皆見於面.亦當與寸口尺内相應.
假令
色青.其脉當弦而急.
色赤.其脉浮大而散.
色黄.其脉中緩而大.
色白.其脉浮濇而短.
色黒.其脉沈濡而滑.
此所謂五色之與脉.當參相應也.
脉數.尺之皮膚亦數.
脉急.尺之皮膚亦急.
脉緩.尺之皮膚亦緩.
脉濇.尺之皮膚亦濇.
脉滑.尺之皮膚亦滑.

五藏各有聲色臭味.當與寸口尺内相應.其不相應者病也.
假令
色青.其脉浮濇而短.若大而緩.爲相勝.
浮大而散.若小而滑.爲相生也.
經言.
知一爲下工.知二爲中工.知三爲上工.
上工者十全九.中工者十全八.下工者十全六.
此之謂也.


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 十三難の訓読

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(426号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十三難に曰く。
経に言う。
其(そ)の色を見(あら)わして其の脉を得ず。
反(かえ)って相勝の脉を得る者は、即(すなわ)ち死し。
相生の脉を得る者は、病自ら已(い)ゆ。.
色と脉、当(まさ)に参(まじ)えて相応すべし、之を成すこといかん。
然(しか)るなり。
五臓に五色有って、皆な面に見わる、亦(また)当(まさ)に寸口は尺内と相応すべし。
仮令(たと)えば、
色青きは、其の脉当に弦にして急なるべし、
色赤きは、其の脉浮大にして散、
色黄きは、其の脉中緩にして大、
色白きは、其の脉浮濇にして短、
色黒きは、其の脉沈濡(ちんなん)にして滑(かつ)。
此れいわゆる五色と五脉と、当に参(まじ)えて相応すべくなり。
脉数(さく)なれば、尺の皮膚も亦(また)数、
脉急なれば、尺の皮膚も亦急、
脉緩なれば、尺の皮膚も亦緩、
脉濇(なん・しょく)なれば、尺の皮膚も亦濇、
脉滑(かつ)なれば、尺の皮膚も亦滑、
五臓各々声、色、臭、味あり、当に寸口尺内と相応ずべし、其の応ぜざる者は病むなり。
仮令えば、
色青き、其の脉浮濇にして短、若しくは大にして緩は、相勝となす。
浮大にして散、若しくは小にして滑は、相生となすなり。
経に言う。
一を知るを下工となし、二を知るを中工となし、三を知るを上工となす。
上工は十に九を全うし、中工は十に八を全うし、下工は十に六を全うする。
此れ之の謂なり。

 詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 十三難の解説

(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(426号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十三難の解説をします。
黄帝内経・霊枢・邪気蔵府病形篇から考察するに。
五臓の肝・心・脾・肺・腎に対応する、五色の青・赤・黄・白・黒がある。
「其の色・・・」とは 、例えば青色名なら肝の脉に対応しているが、
其の脉が青色に合う時、合わないと時、とはどの様な状態かを説明しなさい。
色と脉に於いて、相克関係にあるときは病重く死ぬこともある。
相生関係にあるときは病軽く治療をしなくても自然に治る。
五臓の色と脉が相応していれば健康である。この点に関しての診断方法を説明しなさい。
お答えします。
五臓には五色の色があり、それは皆な顔色に現われる。また五臓の脉状と尺部(尺部診:前腕前面の皮膚の色を見て診断する方法)とも相応しているのが健康である。
顔色と脉を例にするとき、
顔色が色青きは、肝木の脉、弦にして急 脉になる。
顔色が色赤きは、心火の脉、浮大にして散脉になる。
顔色が色黄きは、脾土の脉、中緩にして大脉になる。
顔色が色白きは、肺金の脉、浮濇にして短脉になる。
顔色が色黒きは、腎水の脉、沈濡(ちんなん)にして滑(かつ)脉になる。
以上のごとく、五色と五脉とは相応しているのが健康の証である。
脉数は心火の脉で、前腕前面の皮膚は熱っぽい肌の状態である。
脉急は肝木の脈(弦脉)で、前腕前面の皮膚は突っ張った肌の状態である。
脉緩は脾土の脉で、前腕前面の皮膚は柔らかい肌の状態である。
脉濇(なん・しょく)は脉が渋(しぶ)る肺金の脉で、前腕前面の皮膚は乾燥した肌の状態である。
脉滑(かつ)は腎水の脉で、前腕前面の皮膚は潤い滑らかな肌の状態である。
※ここの条項で重要なのは診断に於いて「脉状」を中心にして、各々の五蔵の色体表を診る事です。
五臓の脉状と、それぞれの五声、五色、五臭、五味には相生と相克の関係があります。
まさに、五臓の脉状と尺部(尺部診:前腕前面の皮膚の色を見て診断する方法)とも相応しているのが健康である。相応しない患者は病気になっているのだと。
例えば、
色が青いのは肝木で、その脉が浮濇にして短は「肺の脉」である。
もしくは大にして緩は「脾の脉」です。だから、色が青くて肺金や脾土の脉を打っているものは相勝すなわち「相克の関係」になります。(木剋土・金剋木の相克の関係になりますね。)
また、浮大にして散は「心の脉」、もしくは小にして滑は「腎の脉」これは相生関係ですと。
(木生火・水生木の相生関係ですね。)
経絡鍼理論から鍼医師を考察するとき。
「一を知る」とは、脉だけを知る鍼医師を下工だと言い。
「二を知る」とは、脉と色の二つを知っている鍼医師を中工と言い。
「三を知る」とは、脉と色と尺膚の色艶の三つを診れる鍼医師は上工と呼ばれると。
上工の鍼医師は十人の患者の内に九人を治す。
中工の鍼医師は十人の患者の内に八人を治す。
下工の鍼医師は十人の患者の内に六人を治す。
この様に鍼医師は病人を治療する事が出来ると。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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   十三難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(426号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕十三難曰.
〔訓読〕十三難に曰く。
〔解説〕十三難の解説をします。

〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・邪気蔵府病形篇から考察するに。

〔原文〕見其色而不得其脉.
〔訓読〕其(そ)の色を見(あら)わして其の脉を得ず。
〔解説〕五臓の肝・心・脾・肺・腎に対応する、五色の青・赤・黄・白・黒がある。
   「其の色・・・」とは 、例えば青色名なら肝の脉に対応しているが、
    其の脉が青色に合う時、合わないと時、とはどの様な状態かを説明しなさい。

〔原文〕反得相勝之脉者.即死.得相生之脉者.病即自已.
〔訓読〕反(かえ)って相勝の脉を得る者は、即(すなわ)ち死し。
    相生の脉を得る者は、病自ら已(い)ゆ。.
〔解説〕色と脉に於いて、相克関係にあるときは病重く死ぬこともある。
            相生関係にあるときは病軽く治療をしなくても自然に治る。

〔第十三難での言葉の意味〕「相勝」とは相克関係の事。

〔原文〕色之與脉.當參相應.爲之奈何.
〔訓読〕色と脉、当(まさ)に参(まじ)えて相応すべし、之を成すこといかん。
〔解説〕五臓の色と脉が相応していれば健康である。この点に関しての診断方法を説明しなさい。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
五藏有五色.皆見於面.亦當與寸口尺内相應.
假令
色青.其脉當弦而急.
色赤.其脉浮大而散.
色黄.其脉中緩而大.
色白.其脉浮濇而短.
色黒.其脉沈濡而滑.
此所謂五色之與脉.當參相應也.
〔訓読〕
五臓に五色有って、皆な面に見わる、亦(また)当(まさ)に寸口は尺内と相応すべし。
仮令(たと)えば、
色青きは、其の脉当に弦にして急なるべし、
色赤きは、其の脉浮大にして散、
色黄きは、其の脉中緩にして大、
色白きは、其の脉浮濇にして短、
色黒きは、其の脉沈濡(ちんなん)にして滑(かつ)。
此れいわゆる五色と五脉と、当に参(まじ)えて相応すべくなり。
〔解説〕
五臓には五色の色があり、それは皆な顔色に現われる。また五臓の脉状と尺部(尺部診:前腕前面の皮膚の色を見て診断する方法)とも相応しているのが健康である。
顔色と脉を例にするとき、
顔色が色青きは、肝木の脉、弦にして急 脉になる。
顔色が色赤きは、心火の脉、浮大にして散脉になる。
顔色が色黄きは、脾土の脉、中緩にして大脉になる。
顔色が色白きは、肺金の脉、浮濇にして短脉になる。
顔色が色黒きは、腎水の脉、沈濡(ちんなん)にして滑(かつ)脉になる。
以上のごとく、五色と五脉とは相応しているのが健康の証である。

〔原文〕
脉數.尺之皮膚亦數.
脉急.尺之皮膚亦急.
脉緩.尺之皮膚亦緩.
脉濇.尺之皮膚亦濇.
脉滑.尺之皮膚亦滑.
〔訓読〕
脉数(さく)なれば、尺の皮膚も亦(また)数、
脉急なれば、尺の皮膚も亦急、
脉緩なれば、尺の皮膚も亦緩、
脉濇(なん・しょく)なれば、尺の皮膚も亦濇、
脉滑(かつ)なれば、尺の皮膚も亦滑、
〔解説〕
脉数は心火の脉で、前腕前面の皮膚は熱っぽい肌の状態である。
脉急は肝木の脈(弦脉)で、前腕前面の皮膚は突っ張った肌の状態である。
脉緩は脾土の脉で、前腕前面の皮膚は柔らかい肌の状態である。
脉濇(なん・しょく)は脉が渋(しぶ)る肺金の脉で、前腕前面の皮膚は乾燥した肌の状態である。
脉滑(かつ)は腎水の脉で、前腕前面の皮膚は潤い滑らかな肌の状態である。

〔解説補足〕
【井上恵理先生と本間祥白先生の解釈より抜粋します。】
「尺の皮膚」と言うものは、前腕前面ですね。
ここの皮膚の感じと脉との関係を言っています。
脉が速い時には尺の皮膚もまた数だと。
「数の皮膚」とは、これは熱がある・熱っぽい皮膚の事です。(脉数は心火の脉)
「急の皮膚」とは、引きつっている・突っ張っている。(脉急は弦脉で肝木の脈・筋肉の緊張)
「緩の皮膚」とは、緩(ゆる)やか・柔らかい。(脉緩は脾土の脉)
「濇(なん・しょく)の皮膚」とは、乾燥した肌。(脉濇(なん・しょく)は脉が渋(しぶ)る肺金の脉)
「滑(かつ)」とは、スベスベしている肌・潤い滑らかな肌。(脉滑(かつ)は腎水の脉)

〔原文〕
五藏各有聲色臭味.當與寸口尺内相應.其不相應者病也.
假令
色青.其脉浮濇而短.若大而緩.爲相勝.
浮大而散.若小而滑.爲相生也.
〔訓読〕
五臓各々声、色、臭、味あり、当に寸口尺内と相応ずべし、其の応ぜざる者は病むなり。
仮令えば、
色青き、其の脉浮濇にして短、若しくは大にして緩は、相勝となす。
浮大にして散、若しくは小にして滑は、相生となすなり。
〔解説〕
※ここの条項で重要なのは診断に於いて「脉状」を中心にして、各々の五蔵の色体表を診る事です。
五臓の脉状と、それぞれの五声、五色、五臭、五味には相生と相克の関係があります。
まさに、五臓の脉状と尺部(尺部診:前腕前面の皮膚の色を見て診断する方法)とも相応しているのが健康である。相応しない患者は病気になっているのだと。
例えば、
色が青いのは肝木で、その脉が浮濇にして短は「肺の脉」である。
もしくは大にして緩は「脾の脉」です。だから、色が青くて肺金や脾土の脉を打っているものは相勝すなわち「相克の関係」になります。(木剋土・金剋木の相克の関係になりますね。)
また、浮大にして散は「心の脉」、もしくは小にして滑は「腎の脉」これは相生関係ですと。
(木生火・水生木の相生関係ですね。)

   
〔原文〕
經言.
知一爲下工.知二爲中工.知三爲上工.
〔訓読〕
経に言う。
一を知るを下工となし、二を知るを中工となし、三を知るを上工となす。
〔解説〕
経絡鍼理論から鍼医師を考察するとき。
「一を知る」とは、脉だけを知る鍼医師を下工だと言い。
「二を知る」とは、脉と色の二つを知っている鍼医師を中工と言い。
「三を知る」とは、脉と色と尺膚の色艶の三つを診れる鍼医師は上工と呼ばれると。

〔原文〕上工者十全九.中工者十全八.下工者十全六.此之謂也.
〔訓読〕上工は十に九を全うし、中工は十に八を全うし、下工は十に六を全うする。
    此れ之の謂なり。
〔解説〕
上工の鍼医師は十人の患者の内に九人を治す。
中工の鍼医師は十人の患者の内に八人を治す。
下工の鍼医師は十人の患者の内に六人を治す。
この様に鍼医師は病人を治療する事が出来ると。


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〔解説参考HP〕五蔵の色体表 http://you-sinkyu.ddo.jp/c202.html を参照されたし。

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今日も何とか難経十三難を掲載できました。



2014.4.5.


 

Posted by やまちゃん at 14:25 | Comments(0) | 難経 ブログ勉強会 

十二難は鍼医師の誤った治療を糾弾するものです。

2014年04月03日


  

  難経 第十二難

ゆっくり堂の『難経ポイント』  第十二難   ank012

  
※ 十二難のポイント其の一、

    十二難は鍼医師の誤った治療を糾弾するものです。


※ 十二難のポイント其の二は、

   鍼灸師は陰陽虚実の診断を正しくしないと、
   反対の治療をして患者を死なせる事があると、
   厳しく注意喚起するものです。


詳しくは、こちらのHPの下段の初学者用 
経絡鍼灸教科書 難経からご覧ください。
http://www.yukkuridou.com/


難経 第十二難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

十二難曰.
經言.
五藏脉已絶於内.用鍼者反實其外.
五藏脉已絶於外.用鍼者反實其内.
内外之絶.何以別之.
然.
五藏脉已絶於内者.腎肝氣已絶於内也.而醫反補其心肺.
五藏脉已絶於外者.其心肺脉已絶於外也.而醫反補其腎肝.
陽絶補陰.陰絶補陽.是謂實實虚虚.損不足益有餘.
如此死者.醫殺之耳.
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 十二難の訓読

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(425号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十二難に曰く。
経に言う。
五臓の脉已(すで)に内に絶するに、鍼を用うる者反(かえ)ってその外を実す。
五藏の脉已に外に絶するに、鍼を用うる者反ってその内を実す。
内外の絶は、何を以ってか之を別たん。
然(しか)るなり。
五臓の脉已に内に絶すとは、腎肝の気已に内に絶するなり。
而(しか)るを医反ってその心肺を補う。
五臓の脉已に外に絶すとは、其の心肺の脉已に外に絶するなり。
而るを医反ってその腎肝を補う。
陽絶して陰を補い、陰絶して陽を補う、
是を実実虚虚と謂い、不足を損じ有余を益すと謂う。
此(こ)の如(ごと)くして死する者は、医之を殺すのみ。

 詳しくは各先生の文献を参照されたし。

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 十二難の解説

(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(425号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十二難の解説をします。

黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇から考察するに。

陰経の脉全体が絶(た)えて無くなっているのに、
鍼医師が反対の治療法を施術してその陽経を補ってしまった。

陽経の脉全体が絶えて無くなっているのに、
鍼医師が反対の治療法を施術してその陰経を補ってしまった。

陰陽の絶脉は何を根拠としてこれを判別するのか説明しなさい。

お答えします。

陰経の脉全体が絶えて無くなっているのは、腎肝の気がすでに無いからである。
しかも鍼医師が反対の治療法を施術して心肺の脉に補法を行ったと。

陽経の脉全体が絶えて無くなっているのは、心肺の脉気がすでに無いからである。
しかも鍼医師が反対の治療法を施術して腎肝の脉に補法を行ったと。

陽が絶しているのに陰を補う、陰が絶しているのに陽を補うと、
実をますます実し、虚をますます虚してしまう。
足らないものを損じ、余っているものにまた加える事になる。

この様な施術をする鍼医師は患者を殺してしまうのみだと。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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    十二難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(425号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕十二難曰.
〔訓読〕十二難に曰く。
〔解説〕十二難の解説をします。

〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕黄帝内経・霊枢・九鍼十二原篇から考察するに。

〔原文〕五藏脉已絶於内.用鍼者反實其外.
〔訓読〕五臓の脉已(すで)に内に絶するに、鍼を用うる者反(かえ)ってその外を実す。
〔解説〕陰経の脉全体が絶(た)えて無くなっているのに、鍼医師が反対の治療法を施術してその陽経を補ってしまった。
〔解説補足1〕陰経の脉が虚しているのに陽経に補法の手技を行ったと。
〔解説補足2〕正しい鍼治療は、陰経の脉が虚している時は陰経に補法を補わなければならない。
〔第十二難での言葉の意味〕
     「五臓の脉已」とは陰経の脉全体と考えます。
     「内」とは陰を指します。「外」とは陽を指します。「実」とは補法を指します。

〔原文〕五藏脉已絶於外.用鍼者反實其内.
〔訓読〕五藏の脉已に外に絶するに、鍼を用うる者反ってその内を実す。
〔解説〕陽経の脉全体が絶えて無くなっているのに、鍼医師が反対の治療法を施術してその陰経を補ってしまった。
〔解説補足1〕陽経の脉が虚しているのに陰経に補法の手技を行ったと。
〔解説補足2〕正しい鍼治療は、陽経の脉が虚している時は陽経に補法を補わなければならない。

〔原文〕内外之絶.何以別之.
〔訓読〕内外の絶は、何を以ってか之を別たん。
〔解説〕陰陽の絶脉は何を根拠としてこれを判別するのか説明しなさい。

    
〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕
五藏脉已絶於内者.腎肝氣已絶於内也.而醫反補其心肺.
五藏脉已絶於外者.其心肺脉已絶於外也.而醫反補其腎肝.
〔訓読〕
五臓の脉已に内に絶すとは、腎肝の気已に内に絶するなり。而(しか)るを医反ってその心肺を補う。
五臓の脉已に外に絶すとは、其の心肺の脉已に外に絶するなり。而るを医反ってその腎肝を補う。
〔解説〕
陰経の脉全体が絶えて無くなっているのは、腎肝の気がすでに無いからである。
しかも鍼医師が反対の治療法を施術して心肺の脉に補法を行ったと。
陽経の脉全体が絶えて無くなっているのは、心肺の脉気がすでに無いからである。
しかも鍼医師が反対の治療法を施術して腎肝の脉に補法を行ったと。

〔解説補足〕井上恵理先生の解釈より抜粋。
ここで言う「内外」は手の脉の腕関節から内側・外側と言う意味です。
『難経』ではこう言う区別があるんですね。
前の方を外、後ろの方を内と言って、前後陰陽と言います。
(脉を診るとき)浮かして沈めては浮沈陰陽ですが、関から前・後ろと言うのを「内外」と言う。
いわゆる前後陰陽で心肺は外、肝腎は内です。だから脉から言えば関前・関後と言う意味です。

〔原文〕
陽絶補陰.陰絶補陽.是謂實實虚虚.損不足益有餘.
如此死者.醫殺之耳.
〔訓読〕
陽絶して陰を補い、陰絶して陽を補う、是を実実虚虚と謂い、不足を損じ有余を益すと謂う。
此(こ)の如(ごと)くして死する者は、医之を殺すのみ。
〔解説〕
陽が絶しているのに陰を補う、陰が絶しているのに陽を補うと、実をますます実し、虚をますます虚してしまう。足らないものを損じ、余っているものにまた加える事になる。
この様な施術をする鍼医師は患者を殺してしまうのみだと。


ゆっくり堂の『難経ポイント』  第十二難   ank012
  
※ 十二難のポイント其の一、
    十二難は鍼医師の誤った治療を糾弾するものです。

※ 十二難のポイント其の二は、
   鍼灸師は陰陽虚実の診断を正しくしないと、
   反対の治療をして患者を死なせる事があると、厳しく注意喚起するものです。


今日も何とか難経12難をアップしました。

鍼灸は虚実に対して補瀉のシンプルな治療法ですが、

その診断と治療の古の教えの深さと、

時代に合った鍼術の技量の進化を、

日々の臨床と古典の学習から、

正姿に未だ至らぬ、遠き道のりとをして、

そして、代えがたい、鍼灸師としての喜びもあると。

唯ひとえに患者さんの自然治癒力にすがりながら、

朗らかに、病の改善を共鳴する日々です。



2014.4.3.





 

Posted by やまちゃん at 18:29 | Comments(0) | 難経 ブログ勉強会 

欠滞脉の位置で五臓の変調が判る。 難経 第十一難

2014年04月02日

  

  難経 第十一難

ゆっくり堂の『難経ポイント』  第十一難   ank011
  
※ 十一難のポイント其の一、

欠滞脉が顕れる脉泊数の位置で五臓の変調が判る事です。


※ 十一難のポイント其の二、

難経十一難「欠滞脉が示す五臓の不調表」を作りました。(nk0111)



こちらのHPの下段の初学者用 
経絡鍼灸教科書 難経からご覧ください。
http://www.yukkuridou.com/


難経 第十一難 原文

(『難経』原本は底本:『難経』江戸・多紀元胤著、『黄帝八十一難経疏証』(国立国会図書館所蔵139函65号)オリエント出版、難経古注集成5(1982年)に影印)を参考にしています。

十一難曰.
經言.
脉不滿五十動而一止.一藏無氣者.何藏也.
然.
人吸者隨陰入.呼者因陽出.
今吸不能至腎.至肝而還.故知一藏無氣者.腎氣先盡也.

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 十一難の訓読

(井上恵理先生の解説:経絡鍼療(423号)と本間祥白先生の解説、福島弘道先生の解説を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十一難に曰く。
経に言う。
脉五十動に満たずして一止するは、一臓に気無しとは、何(いず)れの臓ぞや。
然(しか)るなり。
人の吸は陰に随(したが)って入(い)り、呼は陽に因(よ)って出(い)づ。
今、吸して腎に至ること能(あた)わず、肝に至って還る。
故に知らんぬ一臓気無きものは、腎気先づ尽きるなり。

 詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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 十一難の解説

(井上恵理先生の解釈:経絡鍼療(423号)と本間祥白先生の解釈、福島弘道先生の解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)

十一難の解説をします。
陰陽五行理論の法則から。
人間の脉動は五十回拍動する時に、全身の経脉を全部流れるのですが、脉拍が五十動を打たない内に一回止まる事があります。これは一つの臓器に気が無い(流れていない)と診ますが、この場合どの臓器に問題があるのかを説明しなさい。
お答えします。
人の呼吸では吸う息(吸気)は陰に随って入り、吐く息(呼気)は陽に随って出る様に成っています。

現在の症状は、吸気が腎まで充分に通じないで、途中の肝で引き返って呼気として吐き出されています。
この現象の理由は四十動から五十動の間で脉が一止(脉が1回止まる:結代脉:「欠滞のある脉」)するもので、一臓に気が無いのです。そしてこれは、腎の生気が尽きているからです。


詳しくは各先生の文献を参照されたし。
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  十一難の詳細解説

(井上恵理先生の訓読・解釈:経絡鍼療(423号)と本間祥白先生の訓読・解釈、福島弘道先生の訓読・解釈を参考にして、
 山口一誠の考察文にて構成しました。)詳しくは各先生の文献を参照されたし。

山口一誠の考察により原文・訓読・解説(解説補足)の順に文章を構成します。

〔原文〕十一難曰.
〔訓読〕十一難に曰く。
〔解説〕十一難の解説をします。

〔原文〕經言.
〔訓読〕経に言う。
〔解説〕陰陽五行理論から考察すると。

〔原文〕脉不滿五十動而一止.一藏無氣者.何藏也.
〔訓読〕脉五十動に満たずして一止するは、一臓に氣無しとは、何(いず)れの蔵ぞや。
〔解説〕人間の脉動は五十回拍動する時に、全身の経脉を全部流れるのですが、脉拍が五十動を打たない内に一回止まる事があります。これは一つの臓器に気が無い(流れていない)と診ますが、
この場合どの臓器に問題があるのかを説明しなさい。

〔解説補足〕
経:黄帝内経・霊枢:根結篇・栄衛循環論からの本間祥白先生の考察より。
難経十一難は、「結代脉」の一部を論じているもので「脉五十動に満たず」とは四十動までは正しく脉を打ち、それから五十動までの十動間に於いて一止するものは五臓の内の一臓に気が無いと言うがそれは何(いず)れの臓であるかと質問しているのです。

〔原文〕然.
〔訓読〕然(しか)るなり。
〔解説〕お答えします。

〔原文〕人吸者隨陰入.呼者因陽出.
〔訓読〕人の吸は陰に随(したが)って入(い)り、呼は陽に因(よ)って出(い)づ。
〔解説〕
人の呼吸では吸う息(吸気)は陰に随って入り、吐く息(呼気)は陽に随って出る様に成っています。

〔解説補足〕四難に於いては、原文:「呼出心與肺.吸入腎與肝.」訓読:呼は心と肺とに出て、吸は腎と肝とに入るとあり。

〔原文〕今吸不能至腎.至肝而還.
〔訓読〕今、吸して腎に至ること能(あた)わず、肝に至って還る。
〔解説〕
現在の症状は、吸気が腎まで充分に通じないで、途中の肝で引き返って呼気として吐き出されています。

〔原文〕故知一藏無氣者.腎氣先盡也.
〔訓読〕故に知らんぬ一臓気無きものは、腎気先づ尽きるなり。
〔解説〕
この現象の理由は四十動から五十動の間で脉が一止(脉が1回止まる:結代脉:「欠滞のある脉」)するもので、一臓に気が無いのです。そしてこれは、腎の生気が尽きているからです。

〔十一難、総体解説補足〕

井上恵理先生と本間祥白先生の解釈より。

人間の「気」は脉動50回で身体を一周する訳ですが、
五十動から四十動の間で一止するものは一臓に気が無い。
これは、腎の生気が尽きているもの。
四十動から三十動の間で一止するものは二臓に気が無い。
これは、肝腎の生気が尽きているもの。
三十動から二十動の間で一止するものは三臓に気が無い。
これは、脾肝腎の生気が尽きているもの。
二十動から十動の間で一止するものは四臓に気が無い。
これは、心脾肝腎の生気が尽きているもの。
十動に満たずして欠滞するものは五臓全部に気が無い。
これは、五臓の全て、肝心脾肺腎の生気が尽きているものは、
すなわち生命が亡くなると。

『難経本義』の説明によると、病人の死期・死ぬ時期を考えているとの記載があるそうです。

まとめ、
いわゆる脉が正常であるとか正常でないと言うのではなくて、脉の動き方によって「欠滞のある脉」の人は死ぬことがあるんだと、ここ(十一難)では注意している様です。
ただ脉に虚実があると言うだけでなくて、脉の動きに欠滞のある人は気を付けなくてはいけないと
注意しているのだと思います。

本間祥白先生の考察より。
黄帝内経・霊枢:根結篇では呼吸の理を挙げずに栄衛循環の度数を問題にしている。即ち一日一夜に
五十度正しく循環すれば、脉動も五十回に至るも一止もしない。
「結代脉」がないと言う事は五義皆正気があって正しい状態である事を示すものである。

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今日も何とか難経ポイント十一難をアップしました。



2014.4.2.


 

Posted by やまちゃん at 16:23 | Comments(0) | 難経 ブログ勉強会