13 風論 最終号

2012年04月16日


風論 最終号

13 風論 最終号

一、風論 :山口一誠の分類
南北経驗醫方大成・病証論を分類・考察する。

南北経驗醫方大成 による 病証論
井上恵理 先生 講義録
の文献を、わかりやすく、まとめて、みたいと思います。

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風 論 最終13号です。 

○ 二証を重ねる場合。 P29上段10行目~P29下段3行目まで。。

このコーナーのポイントは、
風証に寒・湿の証が重なって病状が出た時の脉状の特徴と治療法について講義されています。
①「風寒」の脉状は、浮遅脉になります。
②「風湿」の脉状は、浮濇を帯びます。
③「風寒湿」証の三つ巴の症状もある。の脉状は「浮遅濇」かな?
④ 治療法は、どちらの邪が患者の体に強い影響を与えているか比較し、
       強い方を治療をする。

※ 詳しくは本文:
  「南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理 先生 講義録」をお読みください。

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「大成論」:原文 16行目下辺りから。。

凡此風證、或挟寒則脉帯浮遅。 
挟湿則脉帯浮濇、
二證倶有、則従偏勝者治之。
用薬更宜詳審。 

ーーーーーーーーー

井上恵理 先生の訳:

凡(およ)そ此の風証、或いは寒を挟む(兼ねる)ときは脉、浮遅を帯ぶ、
湿を挟むときは脉、浮濇を帯ぶ、
二証倶にある時には偏勝の者に従って之を治すべし。
薬を用いること更に宜しく詳審すべし。
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井上恵理 先生の解説:   

注:〔 〕内は山口一誠の考えです。

風証に寒証を兼ねるとき、「風寒」といって
〔「風の邪」と「寒の邪」の二たつが〕入った
場合には、脉が、浮いて遅脉になります。
〔その特徴は〕(「風の邪」が入ったとき)よりも遅くなるから分かります。
それから、〔風証に〕湿証を兼ねるときには、
「風湿」といいます。このときは脉は、浮濇を帯びます。
更に、〔風証に〕寒証・湿証の三つ巴で入り込んだときも、
偏勝の者に従って之を治すべし。の治法で、
どちらの邪が患者の体に強い影響を与えているか比較し、
例えば、風の方が強ければ風邪の治療をするし、
寒が強ければ寒の治療をする。
湿が強ければ湿の治療をする。。。
という事です。
〔用薬更宜詳審。とは、漢方薬を処方する時は尚更これを詳細に検討する事の意味です。〕
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○ 七情の乱れによるもの。 P29下段5行目~P30上段11行目まで。。

このコーナーのポイントは、
経絡治療の原則から、「内因無ければ外邪入らず」に従い、
風邪の症状が出ていても、
最初に内因の「気」を調えて、
その後に風の邪を治す方法を取る。
ことが講義されています。
 
※ 詳しくは本文:
  「南北経驗醫方大成による病証論 井上恵理 先生 講義録」をお読みください。
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〔原文〕
若因七情六淫而得者、當先氣調而後治風邪。
ーーーーーーーーー

井上恵理 先生の訳:
若し七情六淫によって得る者は先んず気を調えて、而して後に風を治すべし。

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井上恵理 先生の解説:   

注:〔 〕内は山口一誠の考えです。

〔経絡治療の臨床的立場から解説すれば〕、― 
七情という内因があって、
そしてそこに外邪である「風」が入ったときには、
最初に「気」を調えて、
その後に風の邪を治す方法を取るべきであるという事を言っています。 
邪だけを、すぐに瀉法を用いるという様な過ちを犯すなと、
そういった誤ちをすると患者の気を破ってしまう事になるのだと、
こう言っています。
これは大綱的に考えられる事で、
我々のやっている経絡治療なんかでいわゆる
「内因が無ければ外邪はは入らない」
という一つの法則を立てておりますので、
この「七情の乱れ」という物があるが故に
外邪に侵入だという考え方から
実際の治療の場においても「本治法」、
「即ち七情を治す法」を行って、
後に色々な風邪の治療〔標治法〕を行うべきであるという事になります。 
寒・湿でも同様です。
外邪を駆逐する事については、
一応瀉法にてその目的を達する事が原則です。
しかし、
内に「七情の乱れ」があって外邪が入った場合は、
先ず補って後に瀉すという方法を採る訳です。
――
注: 〔内因が起こる条件は七情にある。〕
七情とは、怒、喜、憂、思、悲、驚、恐の感情ことを言います。
この、七情に傷つけられ、精神を労傷し、精神的過労という状態から引き起こされて現れる。

注:六淫の邪は外邪です。次の6つがあります。風暑寒湿燥火です。

―参考:東洋医学概論(基礎医学Ⅰ)p59の記載より。―
自然界には、風暑寒湿燥火(熱)の六気があり、気候・気象の変化を主っている。 
この六気が人体の適応能力を超えて作用したとき、疾病の原因となり六淫という。 
また、
五行では五悪といい、風熱湿燥寒に分類対応させている。

五行 木 火 土 金 水
五臓 肝 心 脾 肺 腎
五悪 風 熱 湿 燥 寒

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○ 補瀉論 。 P30上段13行目~P30下段8行目まで。。

このコーナーでは、
風邪の治療を施す上で臨床経験上、四つの事がある。と講義されています。

①精神的な疲れは、陰を「補法」のみでカゼが自然治癒する事がある。
②働き過ぎて疲れてカゼを引いた場合は「瀉法」だけで改善する場合がある。
③上記①②の治療原則は本治法(補法)を行って後、
 瀉法を用いると言う事を原則として考える。
④急性症状の場合は、瀉法を先にやる場合がある。・・
 等を講義されています。
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井上恵理 先生の解説:

ところが、実際に風邪の治療をやっていますと、
これを瀉法をしなくてはならないと思えるような症状であっても、
陰を補っていると、つまり内因の七情が傷(やぶ)られていると言う考え方で五臓の脉を整える方法をとると、
特別カゼに対する処置をしなくても案外カゼが自然治癒する事が多いのであります。
ことに心因労傷つまり精神的な疲れがあって、
そしてカゼを引いた場合には尚更こうゆう方法
をとらなければならない様です。
あるいは労倦つまり働き疲れてカゼを引いた場合は、案外瀉法だけで宜しい。
― 
この瀉法だけでいい場合と、
補法を用いなければならない場合と、
どうゆう風に区別するかと言いますと、
先ず基本的には本治法(補法)を行って後、
瀉法を用いると言う事を原則として考える訳です。 
しかし何が何でもではなくて、
あまりにも熱が高く悪寒なんかが甚(はなはな)だしくて、
頭痛とか身体が痛いという症状が強く現れている場合は、
とりあえず瀉法を先に行って患者の苦痛を早く取り除いてやる事が必要です。
〔その後、本治法を施します。〕― 
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○ 病状の軽重と病の軽重 。 

P30下段10行目~P31上段4行目まで。。

このコーナーのポイントは、
「病気の症状が激しい」から「病(やまい)が重い」と安易に考えてはならない事。
また、体力の無い虚体の人「病が重いくても」微熱しか出ない。
病人の体力、体質〔闘病力:病気と戦う力〕を加味して
「病の軽重」判断する事。等を講義されています。
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生体という物は一つの刺激に対する反応作用を物っている、 
症状が強いということが、
〔すなわち〕病気が重いという訳ではない。
これは誤解しやすい。
症状が強いと、病気が重いと考えがちになる。
ところが実際には症状が強く現れるという事は、
むしろ生体にまだそれだけの力〔闘病力:病気と戦う力〕が
あるという事なんです。 
症状が軽いと、とかく「病気が軽い」と診誤る事があるんです。
カゼを引いたんだが熱も出ないものは、
その人の身体が弱っている、つまり虚しているという事です。
例えば常に大丈夫だという人がカゼを引いた時ほど熱が出るはずです。
反対に結核なんかのの場合は身体が弱ってから熱が出るので微熱しか出ないんです。
〔今なら、低体温体質で産熱力の無い人〕
そういう意味で症状の軽重によって病状が軽いか重いか
〔安易に〕判断なさらない方が宜しいです。
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大成論:原文 
所中在経絡、脉微細者生。
干臓腑・口開手撒・眼合遺尿・髪直吐沫・揺頭直視・聲如鼾睡者難治 
又有中之軽者。在皮膚之間、言語微蹇眉角牽引、遍身瘡癬状如蟲行、目旋耳鳴、
又當随随治之。

ーーーーーーーーー

 井上恵理 先生の訳:

中る所経絡にあって脉微細なる者は生く。 
臓腑に入って口開き手散(ひろが)り眼合(めがっ)し、
遺尿し、髪直(た)ち沫(あわ)を吐き頭を揺すり直視して声は鼾睡(かんすい:イビキ)の如き者は治し難し。
又、中ること軽き者有り。
皮膚の間に在りて言語微蹇(びけん)し眉角牽引し、遍身に瘡癬ありて状蟲(かたち)の行(は)うが如く、
目旋耳鳴らば、又証に随って之を治すべし。
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 井上恵理 先生の解説:

○ 「感冒」「傷風」「中風」― ○「傷」

中(あた)る所、経絡にありて脉微細なる者は生く。 
即ち風邪でも
「感冒」は皮膚に、
「傷風」は経絡に、
「中風」は臓腑にとあるわけですが、
この傷風の場合には、脉微細なる者は生きるというんです。
その反対に脉洪大の者は死ぬんです。

○「中」
風邪が臓腑に入った時、すなわち、「中風」のことです。
その症状は、口が開いて、手も開いてしまい、眼は塞いだままで、
〔小便が〕垂れ流しになってしまう。
髪直〔逆立ち〕〔口から〕沫(あわ)を吐き
頭を揺すり直視してその声は鼾睡(かんすい:イビキ)のように聞こえる。
こうゆう状態の者は治りにくい。
又、中ること軽き者有り。皮膚の間に在りて言語微蹇(びけん)し眉角牽引す。
言語微蹇(びけん)というのは声が途切れ途切れになると言う事です。
少し喋っては吃(ども)り、少し喋っては吃り、という状態です。
そして眥(まなじり)が引きつりという状態です。
「遍身に瘡癬ありて状蟲(かたち)の行(は)うが如く、
目旋耳鳴らば、又當証に随って之を治すべし。」とは、
身体に床ずれのようなものが出来て、そしてそれが虫が這うような感じがする。
それから目が回る、耳鳴がする・・・
といった症状を起こす場合には、
當(まさ)に証に随ってこれを治すべしといっている訳です。

こうゆう雑多な症状は一つ一つこれは腎だとか肝だとかいう様な区別がつかないから、
即ちその時の証に随って治療しなくてはいけないと、
こうゆう事を言っている訳です。

 以上で,

「南北経驗醫方大成」における「風論」を終わります。


〈参考文献〉
この「風論」をの講義をするに当たって大体次のような古典を参考にしました。

黄帝内経素問の第四十二「風論」、第十九「玉機真蔵論」
「諸病原侯論」:病症論の原典。
「景岳全書」:「類経」を著した張介賓の著作。
「医学正伝」「万病回春」「啓廸集」:曲直瀬道三の著作。
「医心方」:丹波康頼の著作。「病因指南」:岡本一抱の著作。
「古今医統」「東医宝鑑」
など・・・

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経絡鍼灸師の学友ならびに先輩諸先生方の
ご意見・間違いの指摘・などを、
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ゆっくり堂 鍼灸院 
山口一誠 
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礼節・愛・幸福・・感謝・ケセラセラ・
のびのびと希望を持って、ゆっくり行こうよ。♪
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°

isseiちゃんヨリ・・・

2012.4.16-  月曜日・・

 


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